佐藤広一監督「大杉漣さんも喜んでいる」『世界一と言われた映画館』初日舞台挨拶レポート

山形県酒田市に存在した伝説の映画館「グリーン・ハウス」についての証言を集めたドキュメンタリー『世界一と言われた映画館』が、1月5日に公開初日を迎え、それを記念して有楽町スバル座にて初日舞台挨拶が行われ、佐藤広一監督、語り手として出演している佐藤良広、本作の関連書籍の著者の岡田芳郎が登壇した。

「西の堺、東の酒田」と称された商人の町・山形県酒田市に存在した、映画評論家・淀川長治が「世界一の映画館」と評した伝説の映画館、グリーン・ハウス。少人数でのシネサロン、ホテルのような雰囲気のロビー、ビロード張りの椅子等、その当時東京の映画館でも存在しなかった設備やシステムを取り入れ、20歳の若さで支配人となった佐藤久一が作り上げたこの夢の映画館は多くの人々を魅了した。しかし、甚大な被害をもたらした1976年の大火災・酒田大火の火元となり、グリーン・ハウスは焼失してしまう。本作では、それから40年余りの時を越えた今、グリーン・ハウスへかつて集った人々が、煌めいた思い出をもとに言葉を紡いでいく。ナレーションは、今年2月に急逝した名優・大杉漣が務める。

上映前には、チケット発売開始前から長蛇の列が並び、賑やかな初日を迎えた。上映後の舞台挨拶では、佐藤広一監督、本作に語り手の一人として登場した佐藤良広、「世界一の映画館と日本一のフランス料理店を山形県酒田につくった男はなぜ忘れ去られたのか」の著者・岡田芳郎が登壇し、大きな拍手と歓声を受けた。佐藤監督は深々と頭を下げ、「大杉漣さんもこの日を喜んでくださっていると思います」と笑顔で語った。「大杉漣さんとは自分が20代の頃に短編映画にスタッフで参加し、主演を務められていた大杉さんとお知り合いになる機会があった。この映画のナレーションには、大杉さんしかいないと思いました。お願いしたところ即答でご快諾いただき、大杉さんのナレーションで血が通った作品になりました」と大杉漣さんとの思い出を鮮明に語った。山形で映画サークルの活動をしている佐藤良広は「映画を観なくても生きていける。でも映画が生活の中にあると人生が豊かになります。この映画もそんな作品になっていると思います」と本作を絶賛。岡田芳郎は自らの著作と本作について語り、「このような映画ができたことがとても嬉しい。次は佐藤監督にグリーン・ハウスの元支配人を主人公にした劇映画を撮ってほしいですね」と次回作を提案。佐藤監督は「がんばります」と笑顔を見せ、笑いと拍手を浴びた。

『世界一と言われた映画館』
1月5日(土)より有楽町スバル座ほか全国順次公開
監督・構成・撮影:佐藤広一
プロデューサー:髙橋卓也
証言協力:井山計一 土井寿信 佐藤良広 加藤永子 太田敬治 近藤千恵子 山崎英子 白崎映美 仲川秀樹
ナレーション:大杉漣
配給:アルゴ・ピクチャーズ

【作品概要】 「…生きることの悩み、苦しみ、悲しみ、そして喜びなどの一切の縮図が映画館の中に繰り広げられる。」こう記した佐藤久一氏が支配人を務めた、山形県酒田市のグリーン・ハウス。映画評論家・淀川長治氏が「世界一の映画館」と評し、足繁く通ったというその映画館は、来館した人々の心を掴む様々な工夫と設備を取り入れた希有な場所として愛された。しかし、グリーン・ハウスが火元となった“酒田大火”により、甚大な被害を町にもたらして焼失してしまう。そして幾年月も過ぎた今、酒田の人々がグリーン・ハウスと歩んできた自らの歴史を振り返り始める…。

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