【全起こし】河瀨直美「全く違う岩田くんが観られます」岩田剛典「同じくそう思います(笑)」映画『Vision』公開記念イベントレポート 全文掲載

MC:ありがとうございます。そして、永瀬さん。以前は、この作品をご覧になって「心が震えた、観た後に眠れなかった」とおっしゃっていましまが、そこから昨日初日を迎えるまでの心境の変化はありましたか?

永瀬:変わりません。ずっと震えっぱなしです。昨日公開していただいて、またその思いが蘇って来て、さらに震えている感じです。わざわざフランスからジュリエット・ビノシュさんに来ていただいて、もっと震えの幅がでかくなっている感じです。それが、全国の皆さんに届けばいいなと思っています。

MC:ありがとうございます。河瀬監督といえば、役柄そのものになって生活をしてもらうということで、役を積んでいくような形で撮影が進んでいくと思うんですけど、そうすると、なかなかお互いについて個人として話す機会が少ないと思うのですが、永瀬さんは撮影中にビノシュさんとデートされたということなんですが。

河瀬:奈良の談山神社というところでデートをしていただきました。

永瀬:監督にセッティングしていただいて。お昼ご飯をたべながら…。2人で森を歩いてみたりしたんですけど、その時にすごい印象に残っているのは森や木を見ながら、「これは非常に美しい」と言ってらっしゃって。それがものすごいジャンヌとリンクしていて素敵だなと思って。だからもっと深い何かを見つめていらっしゃるんだなという感じがしました。

MC:ビノシュさん、吉野の森にはどのようなことを感じていらっしゃったんですか?

ビノシュ:もちろん、あの森では空気を感じていたり風を感じていたり、いろいろな色彩を感じていたり、光を感じていたり、そして小さなディテールを感じていました。でも、本当にもっと深く言うと「生きているな。生きていて嬉しいな」ということを感じていました。私達はやっぱり街中に暮らしていると、自然とちょっと離れた生活をしがちですよね。でも再び自然に身を置くことによって、また自分とつながるような気持ちになって、とても心が穏やかになりました。人間というのは、もう一度自分の起源に帰り立つという欲求を持っているんじゃないかなと思いますので、そのような自然の中に身を置けたことをとても幸せに思います。しかも、それを唯一人、孤独にやっていたわけではなくて、映画作りというものを通してですね、もちろん俳優の方だけではなく河瀬直美監督というとても個性が豊かな、独立精神の強い監督のもとで一緒にシェアしたということで、そういう気持ちというのが、より深くなったような、より倍増したような気がします。ですからこの『Vision』という作品は私達がシェアしたそういう思いのシンボル的な存在だなと思っています。

MC:ありがとうございます。岩田さんは今回、英語にも挑戦されましたけど、ジュリエットさんと演技するシーンはいかがでしたか?

岩田:そうでうすね、台本を読んで、英語のセリフがあった時は、本当にどうしようかと思いましたね(笑)。でも実際に奈良で生活しつつ、撮影していくんですけども、その間もずっと自分のセリフだったりとか、日常会話でアドリブが返せるようにとか、自分なりに努力はしたんですけど。実際、撮影に入るとビノシュさんの包み込む母性というか、そういうものに自分も助けていただきましたね。目と目が合うだけで、伝わるものがあるというか。これは演者同士にしか分からないものかもしれないですけど、そういうものが切り取られたものが映像になっていくと思いますので、微妙な表情の違いだったりが伝わるといいなと思います。

河瀬:オープニングの電車のシーンでビノシュさんが泣いたんですけど、ポトフを食べているシーンでも岩田くんが泣いちゃうんですね。あれも脚本になかった。この人ね、ジャンヌと目を交わし合うというか、智と交わし合う中で、あの涙が本当に自然と出てきたんですね。

岩田:そうでしたね。

MC:それは全く考えもよらないところで出てきたんですか。

岩田:そうですね。特に決まり事がなくて、アドリブというかシーンまるごとが日常生活を切り取っている感じで撮影してましたので、自然と鈴になった感情で出てきた涙だと。

河瀬:今、ドラマ観ている人は、全く違う岩田くんを、この『Vision』では観られますので、ドラマを観ている人はぜひ『Vision』にも足を運んでいただければと思います。

岩田:同じくそう思います(笑)。

MC:全く印象が違いますからね。ありがとうございました。