【全起こし】主人公の声を演じた能年玲奈改めのんが登壇!『この世界の片隅に』完成披露試写

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登壇者:(左から)片渕須直監督、のん、こうの史代

MC:本作は戦時中の広島・呉を舞台に大切なものを失いながらも前を向いて生きていく女性すずの日々を描いた物語です。こうの史代さんの同名マンガに惚れ込んで、約6年の歳月をかけて時代考証、そして現地考証を重ねた片渕須直監督が丁寧にダイナミックに描き出しています。

そして主人公すずを演じるのは、アニメ声優初主演の女優の、のんさんです。柔らかくどこか懐かしい親しみを感じさせる声ですずさんに息を吹き込みました。また、映画を包み込む音楽はコトリンゴさんがなさいました。時に強く、時に優しく世界を彩ります。クラウドファンディングで日本全国から厚い支持を受けて製作が決定しました作品です。すべての世代に確かな勇気を与える珠玉のアニメーションが誕生いたしました。

ではゲストをお呼びしたいと思います。それではまず本作の監督を務められました片渕須直監督にご登場いただきます。どうぞ拍手でお迎えください。

MC:本日、本当におめでとうございます。

監督:ありがとうございます。

MC:まずはひと言ご挨拶をいただけますでしょうか。

監督:こうの史代さんの原作に出会って、これを映像化するならいつか自分の手でやりたいと、特に主人公のすずさんっていうのを存在の実感として映像の中で捕まえたいと思って、思い続けて6年経ちました。6年の間、順風満帆だったかというとそうでもなくていろんなことがあって、クラウドファンディングというかたちでたくさんのご支援をいただいて今回映画化することができました。感謝しております。これから我々がつくった映画を観ていただきます。よろしくお願いいたします。

MC:ありがとうございます。続けて素敵なゲストをお迎えしたいと思います。主人公・北条すず役でアニメ声優初主演を務めました女優のんさん、そして原作者であるこうの史代先生です。皆さま盛大な拍手でお迎えください。そしてのんさんから監督へお花の贈呈です。お花を主演ののんさんから受け取られたお気持ちをひと言。

監督:今まで結構この作品のイベントをたくさんやってきて、ずっとこうの史代先生にお花をいただいていたんで、今度は“すずさん”からいただけてうれしいです。

MC:それではご登場いただきましたのんさんとこうの先生からひと言ずつご挨拶頂戴したいと思います。のんさんお願い致します。

のん:監督、おめでとうございます。すずさん役をやらせていただきましたのんです。本当に素晴らしい作品で、参加させていただけてすごくうれしいです。ありがとうございます。よろしくお願いします。

MC:ありがとうございます。では、こうの先生お願いします。

こうの:監督、本当にお疲れ様でした。憧れの監督に声をかけていただいてビックリしてそれから6年経ちました。夢のような、本当にできたなという気持ちが、作品を観させていただいてもう胸がいっぱいです。ありがとうございます。よろしくお願いします。

MC:こうの先生おめでたいと言えば、この作品の舞台である広島(カープ)が随分熱いことになってますよね?

こうの:そうですね!今年は何かすごい強くて。(足に貼ったカープのタトゥーシールを見せながら)私もこんな感じで、広島人のたしなみとして当然のことなので(笑)。

MC:もうその瞬間が待ちきれないという感じでしょうか。

こうの:そうですね、阪神にもうちょっと頑張ってもらわないと(笑)。直接対決で勝って優勝していただいた方が。

MC:映画と合わせて広島が盛り上がることは間違いないですね。それでは本編についていくつか質問をさせていただきます。

先ほどちょうど作品をご覧になられたということですが、完成した作品を観て、まずはどんなふうに思われたんでしょうか。のんさんいかがでしたか?

のん:はい、映像で初めて全部通して観させていただいて、普通の暮らしっていうのはどんな時でもあって、生きていかなくてはいけなくて、戦争っていうものがひとつのものとしてあるわけではなくて、その生活と隣り合わせであるというものだというのが、すごく今回の作品で感じて、それがすごく怖いと思いました。だからこそ生活というのは素晴らしくって幸せに思える、そんな作品だと思いました。

MC:監督とこうの先生の隣の席でご覧になっていて「緊張するー」なんておっしゃっていましたが、その辺はいかがでしたか?

のん:めちゃくちゃ緊張しました(笑)。もうビクビクッっていう感じで、、「すいません。。」みたいな「失礼します」みたいな感じでした(笑)。

MC:こうの先生はいかがでしたでしょうか。

こうの:私は監督とのんさんに挟まれた席で、私は2人よりもあとで全体像を観ているからたぶん私の方が緊張したんじゃないかなって(笑)。割となんでもないシーンで泣けたりとかそういう感じがあって。

監督:結構、途中でハンカチ取り出されてましたよね。

こうの:そうなんです、どうでもいいシーンでちょっと涙が出てきたり。

監督:全然普通のところでね。

こうの:そうそう。

MC:ちなみにどんなシーンですか?

こうの:本当になんか割とどうでもいいシーンで、すずが泣いているところではもらい泣きするだろうなーって思ってたんですけど、もっと前の、座敷童が出てくるあたりですでにちょっと涙が。悲しい場面よりも、みんなにすずが優しくされているところとかで、あぁぁ~ってきたり。

MC:やはり生みの親ならではの感情なんでしょうか。のんさんはちょっとホロッとしたり涙がこぼれたりしませんでしたか?

のん:そうですね、あの何て言うか、台詞とか声が入ってなくても映像だけで泣けてしまうと思ったので、、すごい、画です。と思いました。

MC:その画に自分の声がのって、新たな作品になって感動がより巻き起こってきたという感じでしょうか。そして監督、今この作品に6年間かかったということでしたが、なぜアニメ映画として世に出したいと思われたんでしょうか。

監督:わからないんですけど、僕らがどこまで自分と地続きで時代をさかのぼっていけるかなと思ったときに、昭和30年の映画っていうのを前につくったんですけど、まだ自分の想像力の範囲内だったんですけど、そこからたった10年さかのぼっただけでわけわからない世界で、これはいったい何なんだろうなと思って、その中に自分たちが理解できるものをちょっとずつ島みたいに築いてつくって、それがやっぱり自分たちと地続きなんだなと感じられたらなと思って始めました。それで、もしすずさんがご存命だったら、って言っても架空の人ですけどね、存命だとしたら91歳なんですけど、

こうの:水木しげると同い年ですね。

監督:あとエリザベス女王と同い年なんですけど、つくり始めたときは、すずさんが生きていたら85歳くらいだったんですよ。おばあちゃんにお話聞けばいいかなと思っていたんですけど段々難しくなってくるようなこととかありまして、戦争中のことは親からは聞いているんですけど、たぶんここから先は自分たちが自分たちなりにきちんとつかまえ直さないと次の世代とかにどう伝えていいのか僕らが迫られていると思ったので。戦争を描きたいということではなくて、戦争の時代にも自分たちと同時代というか同じ時の流れにいるというのを感じられたらなという思いでずっとやってきました。

MC:映画化決定までの道のりを振り返ると、こうの先生はどんなことが思い出されますか?

こうの:まず初めに監督からお手紙をいただいので、とてもビックリしてあまりにうれしくて枕の下に敷いて寝たことを思い出します(笑)。アニメーションの名前を覚えるのが苦手なんでスルーしてたんですけど、あとから『名犬ラッシー』の方だっていうのを知って、あー(片渕監督に)懸けて良かったなって思いました。それからお会いしてからずっと時代考証とか呉の街についてのいろいろ細かい情報交換を。

監督:「バスは何色でしたか?」とか。

こうの:そうそう、「この地図のここは何があると思いますか?」とか。そういうお話を初めの何年かはしておりまして、それがこうやっていつの間にか色が付いて、音楽が入って、そして声が入って、段々できてくる様子をずっと見させていただいて、しばらくはどんな声が入るのかわからないままきて、出来上がった姿を見られたときはすごくうれしかったです。

監督:最初に僕がこうの先生に、「この作品を映画にさせてください」とお手紙を差し上げて、そしたらお手紙で返信がきて、それはこちらで大事に持ってたんですけど、そのあとずーっと経ってからですけどのんちゃんにやってもらえないでしょうかと原作をお送りしたら、今度のんちゃんからお手紙をもらって。それはメールだったんですけどプリントアウトして財布の中にずっと入れています(笑)。

こうの:くしゃくしゃになってましたよね(笑)。でもすごい大事にされてて。

MC:お三方の間でお手紙交換が。

監督:手紙仲間みたいな。

MC:のんさんは実際にこのすず役を演じられて、例えば自分の中に共通点があるなーとか感じられたことありました?

のん:えーっと、ボーッとしてるって言われるんですけど(笑)、だけど気が強いところがあるみたいな、パワフルなところとかは共感します。

MC:じゃあすずの中に自分と同じ部分を見たんじゃないですか?

のん:そうですね、そこから探っていってとか、共感する部分から(役に)反映していくように頑張りました。

監督:結構質問も投げてもらって。「なぜこういうふうにすずさんが言うのかわからない」とかね。

のん:しつこかったですよね。

監督:とんでもない。

のん:監督、すごいしつこすぎて大丈夫かなって思ってたんですけど、ありがとうございます。

監督:でもその質問で自分でも作品の本質をもう一回捉え直すことができた気がして、最後にエンディングをつくり足したんですけど、そこですごく反映されてるんじゃないかなと思います。単純にすずを演じてもらうとかじゃなくて一度すずさんを理解するという役回りをきちんともっていただいて、それがこちらにも跳ね返ってきて作品がすごくよくなったと思うのですごく感謝しています。

MC:最後にこれから映画をご覧になる皆さんにひと言ずつご挨拶を頂戴したいと思います。では、こうの先生から。

こうの:マンガと違って映画はたくさんの方がいっぺんに観られるのがいいところだなというふうに思っています。みんなで観た後でこのシーンがよかったねとか、感動したねとか、そういうようなお話をしていただければいいなーって思います。のんさんの声も物語の中に明るさが入ったというか、素直な感じが原作にはない素直さがあるのではないかと。たぶん芯の強さみたいなのもあってそこらへんもとってもよくできているなと思いました。よろしくお願いします。

監督:こういうふうにいろんなことをやって、例えば広島や呉の街を戦時中のときのことをきちんと調べて描くということをやってきたんですけど、それも全部すずさんっていう人の実在を自分が感じたかったということが、いちばん大きいんじゃないかなと思いました。そうやって描いた背景に立ったすずさんがどんな声でどんなふうにしゃべるのかなといったときに、のんちゃんしか思いつかなかったんですね。のんちゃんにやっていただいてやっぱりよかったなって思っていて、すずさんが血や肉が通ってる人として映画の中に存在できたと思っています。いろんなことが映画の中で起こると思いますが、すずさんをどうか応援していただけるとありがたいと思っております。よろしくお願いします。

のん:普通の生活とか普通に生きるっていうことが、それだけで、生きるっていうことだけで涙がボロボロあふれてくる、すごく素敵な作品だと思います。是非、ご家族で観ていただけるとすごく大切なものを共感できるんじゃないのかなって思います。是非、観てください。

MC:ありがとうございました。

2016年9月9日 東京・スペースFS汐留

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