伊藤:太賀さん、そういう風に言ってますけど、オダギリさんと今回の共演は三回目でしたっけ?
太賀:そうですね。共演っていう意味では。
伊藤:どうでした?共演するシーンは。
太賀:本当に今回の現場でお会いするまでは、いうなれば恋敵という立ち位置だと思うんですけど、せいいちとして物語の展開も知ってるし、臼田さん演じるツチダがハギオのところに行くのが結構、なんていうんですかね、胸をかきむしられるような感じで、「明日の撮影、俺ないけど、明日の撮影何すんの?」って聞いたら「ハギオとのシーン」って「頼むから行かないでくれ、臼田さん行かないで」みたいな気持ちになっていたんですけど、いざ対面すると、僕としてもオダギリジョーさんなので「オダギリさん、オダギリさん!」という感じで、それまで牙をむいてでもいこうかなと思ったんですけど、対面すると懐にすっぽり入ってしまったというか、その人間的魅力に虜になりました。
伊藤:だそうでございます。
オダギリ:いやなんかもう、お食事にでも連れて行ってあげたい気持ちです。(会場爆笑)
伊藤:ご覧になると本当にせいいちとハギオの人柄とかがにじみ出ている。観ていて非常にこの人たちの気持ちっていうのが感じられる作品なんですよ。ここは冨永監督が男性キャラクター二人を膨らませたって聞いてるんですよ。原作にないところを出したっていう。どういう思いでそこは膨らませていったんでしょうか?
冨永:この二人が単なるかっこいい人で終わらないように。臼田さん演じるツチダがダメ男巡りみたいになるように、魅力あるダメ男、まあ平たく言えばそういう感じですかね。
伊藤:確かにダメ男なんですけど、どちらも非常に捨てがたいというか、皆さん悩むと思うんですよ。どっちのタイプかしらと。それについてはお二人は演じたキャラクターをどう分析したのかをお聞きしたいんですけど、太賀さんはせいいちをどう分析していったんですか?
太賀:そうですね、せいいちはミュージシャンとしての仕事がうまくいっておらず自分の感情に立ち止まってしまっている中で、それでもツチダが支えたくなるような親しみというか愛嬌みたいなものを出していけたらと、何とかオダギリさん演じるハギオと対になれるのかと、親しみで行くしかないという感じでしたね。
伊藤:オダギリさんはどういう風に?
オダギリ:僕のハギオっていうのは先ほどおっしゃられたようなハギオは人たらし的な部分があるなと思っていたので、そこをうまく醸し出せていればうれしいなと思ってましたけど。とにかく『エルネスト』っていうキューバに行った映画で、帰ってきてすぐの作品で。あまりにキューバが大変だったので、こっちの作品でストレスを発散するというか、すごく気持ちのいい、なんかそんな現場だったのは覚えています。