【全起こし】三代目JSB・岩田剛典が“ノーラン節”を大絶賛!「開始5秒から戦場にいるような体験」

映画『ダンケルク』のクリストファー・ノーラン監督の来日記者会見が、8月24日、東京・六本木にて行われ、監督の大ファンだというEXILE/三代目J Soul Brothersの岩田剛典が駆けつけた。今回は本イベントの模様を全文掲載でお届けする。

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MC:本日は『ダンケルク』来日記者会見にたくさんの皆様ありがとうございます。『ダークナイト』『インセプション』の監督クリストファー・ノーランが初めて実話に挑む本作『ダンケルク』。今観ていただいた映像にもあったようにプロデューサーのエマ・トーマスさんがおっしゃっていました「全く新たな究極の映像体験をお送りする」。まさにノーラン監督の最高傑作といえる作品です。いち早く全世界で公開され大ヒットされていますが、すでに多くのメディアでアカデミー賞を有力視されています。尚、本日の映像はLINE LIVEで放送されます。後程みなさんにもご覧になっていただけたらと思います。また今回の会見の感想などは #ダンケルクでつぶやいていていただいて、本作を盛り上げていただけたらと思います。さっそくお迎えしましょう。『インセプション』以来7年ぶりの来日となりました、クリストファー・ノーラン監督です。大きな拍手でお迎えください! ではまず一言いただいてもよろしいですか。

ノーラン:皆さん本日はお越しくださいまして誠にありがとうございます。先ほど仰っていただいたように7年ぶりの来日となるのですが、再び日本に来られてとても光栄に思います。日本を訪れるのはいつも楽しいので、訪れる国の中でも世界で一番好きな国の一つであります。毎回日本の皆さんにこうやって新作をお見せすることができていつもワクワクした気持ちでいるわけですが、この映画の情報を伝えてくださっている方にも感謝を伝えたいと思います。今日はどうもありがとうございます。

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MC:ありがとうございます。本日たくさんの記者の皆様に来ていただいております。ノーラン監督への質問をぜひしていただきたいと思いますが、挙手で私の方から指名させていただきます。

記者:圧倒的な映像体験をさせていただいて非常に臨場感ある作品だったと思うんですけども、この作品は実話ということで込めた意図とか思いとか伝えたいことがあったんでしょうか?

ノーラン:歴史的史実に基づいた映画は初めてですのでかなり徹底的にリサーチを重ねていきました。まず最初にしたことは“ダンケルク”にいた人々の証言の元、入念に実体験を調べていきました。というのは緊迫感溢れる映画、そして観客に当事者のように感じてもらえるような主観的に撮ったような映画が作りたかった。そういう風に撮りたかったので最初はかなり徹底的に調べました。またこの作品を撮るにあたっては歴史学者のジョシュア・レヴィーンさんのお力もお借りして彼が色々な帰還兵たちの証言を集めたわけですけど、彼に歴史アドバイザーとして今回の作品を手伝ってもらいました。映画を企画していく中で“ダンケルク”を体験した存命の方もいらっしゃいましたので、そういった方もジョシュアが紹介してくださり、彼らにインタビューをすることも出来ました。あの浜辺で何が起きたのか、直接お話を聞くことが出来ました。こうしたまだ存命中の方々も御年90代だったりして、映画が完成する前に残念ながらお亡くなりになった方もいるわけですから、お会いできて本当に光栄だったわけなんですけど、そうやって直にお話をすることが出来てこちらとしても非常に心が揺さぶられるものがありました。実際の彼らの体験談がこの映画に反映されているわけですけど、実際に脚本を書いてく上で取ったアプローチはフィクションの人物たちに語ってもらう方法を取りました。

MC:続いての方。

記者:この映画は戦争映画につきものの残虐なシーンがあまり描かれていないと思ったんですけど、今回そのような手法を取られた理由をお伺いできますか?

ノーラン:今回、何故その手法を取らなかったのか、つまり血を見せたりしなかったのか理由を話しますと、『ダンケルク』の話はそもそも他の戦争の話とは性質が違うからですね。これは戦闘の話ではなくて撤退作戦なわけです。逃げていかなくてはならないですから語り口として、ここの物語を語る手法としてはサスペンススリラーを撮るんだという気持ちで撮りました。従来の戦争映画であれば戦争がいかに恐ろしいか、ホラーとして語るんですが、つまりつい目を背けてしまうような、ですが今回はホラーを語るという手法ではなくてサスペンスを語るという手法にしました。だから目をそむけたくなるどころか、目が釘付けになる。そういったアプローチを取っています。ですのでこの作品にある緊張感は、ほかの戦争映画にある緊張感とちょっと違うものだと思います。血やグロテスクなものは見せずに、そして敵なども見せていません。あくまでサバイバルの話であり、じりじりと近寄る敵の存在感を感じさせるそういう手法でサスペンスフルな映画にしています。そして何よりも時間との競争であるということであります。非常にこの作品をサスペンスフルにしています。

MC:続いての方。

記者:あなたの作品は常にオリジナリティを追及している。他の作品とは違いながら興行的成績も収めるという稀有なことを成し遂げておるんですが、振り返るとスティーヴン・スピルバーグとかジョージ・ルーカスとかがいて、あなたも『ジョーズ』や『スター・ウォーズ』が好きとおっしゃられているので、もしこの『ダンケルク』、またフィルムメイカーとしての生き方でスピルバーグとかルーカスに影響を受けたことがあったら教えてください。

ノーラン:今、おっしゃられたスピルバーグとかジョージ・ルーカスの影響は確かに受けています。例えば『スター・ウォーズ』は、僕は7歳の時に観たのですが、非常に決定的な出来事でした。後々一人の映画を作っていく人物として、一人の人として非常に影響を受けました。またスピルバーグさんも親切なことに、ご自身が持っている『プライベート・ライアン』の35mmのフィルムを貸してくださいました。それをスタッフのために上映したわけですけど、彼の『プライベート・ライアン』は非常に参考になりまして、というのは今観てもこれは名作だなと思いました。また人をショックさせる力強さは変わらないなと思いました。つまりこの作品と競争してはいけないという認識に至りました。またスピルバーグが『プライベート・ライアン』で成し遂げた緊張感っていうのは、私たちが『ダンケルク』で求めている緊張感とは異質のものだと再認識いたしました。またスピルバーグ監督からは水上で撮影するときはどうしたらいいのかという良いアドバイスをいただきました。ですから実際にお会いできた監督スピルバーグさん、ジョージ・ルーカスさんの影響、助けをいただいたのみならずもう少しさかのぼれば、私は作品を作る上ではヒッチコックやデヴィッド・リーンの影響を受けています。監督として重要だなと意識するのは今まで監督たちがどういったことをどのように成し遂げたのか、これを学ぶっていうことですね。そういったことを参考に自分の映画作りをしていくことが重要だなと思います。

MC:続いての方。

記者:今回の映画は“撤退”の映画だってお話があったんですけど、その中で監督はサスペンススリラーを狙われたというお話があったんですけど、それと同時にいま世界中で対立が深まっていく中、あえて敵を倒すというヒロイズムを称揚する映画ではなく、逃げるっていう題材を選んだっていうことに監督の意思を感じるんですが、そのあたりどうでしょうか。

ノーラン:映画の作り手としては、今日の世の中で起きていることの影響を受けずにはいられないので、多少そういうものが映画の中に反映されているかもしれません。今の世相を反映させていると皆さんが感じるのであれば、それはたまたまですよっていうのは嘘になるかもしれませんが、故意にそうしているわけではありません。決して今、世の中で起こっていることを描くためにモチーフを使って描き、あるいは説教するという気持ちは毛頭ございません。ですが世の中の影響を受けずにはいられません。だから誠意をもって映画を作るなら影響を垣間見えてしまうことはあると思います。特に今回映画を作っているその最中にイギリスがブレグジットを決めてヨーロッパから離脱するっていうそういった動きが出てきたわけですから1940年当時のあの出来事が別のある意味を携えることになると思うんですが、『ダンケルク』の出来事が今日の世の中で何か我々に語っているとするならば、これはそういうメッセージだと思います。個人として達成できること、あるいは個人の業績がやたらもてはやされる傾向に今日の世界はありますが、そうではなく集団で、あるいはみんなが協力しあってできるものの偉大さ、個人ではなしえないものがみんなで力を合わせればできる。そういうメッセージだと思います。『ダンケルク』の物語は英国人が昔から聞いている話でありますけども、力を合わせればどんな逆境でも超えることが出来るということを思い出させてくれるという話なんですね。ですから『ダンケルク』の話はイギリスだけでなく、どんな文化圏であっても、どんな地域でも皆さんに訴えかけ、訴求し、そして皆さんに共感してもらえるように思います。

MC:そして今日はたくさんのマスコミの方々だけではなく、ノーラン監督の大ファンの方々にも多数お越しいただいている記念すべき日となっています。そのノーラン監督の大ファン代表としてスペシャルゲストをお迎えしたいと思います。パフォーマー、そして俳優など様々な顔を持ち日本のエンターテイメント界の世代を担う男、ノーラン監督を愛し、かねてからの大ファンとお聞きしております。“EXILE”“三代目J Soul Brothers”の岩田剛典さんです。どうぞ大きな拍手でお迎えください!(岩田登場)岩田さん目の前にノーラン監督が居ますけど、今どんな気持ちですか?

岩田:感激ですね。自分は表現者である前に一人のノーランファンでしかないので、今日は本物のノーラン監督に会えて光栄です。

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MC:すでに『ダンケルク』ご覧になられているとのことですが、臨場感のタイムサスペンスを特徴とした全く新しいコンセプトを持つ本作。究極の映像体験をされていかがでいたか?

岩田:今までのノーラン作品とテイストも違いますし、実話を基に作られた作品ということで、最初にこの作品のテイストを観た時に、いい意味でノーランぽくない作品なのかなって思ったんですが、そこはノーラン節。作品が始まってすぐ5秒くらいで戦場に連れていかれていくような、VR体験じゃないですが、そういう疑似体験をさせてもらえるという映画ならではの表現というか。そういう細部までこだわっていらっしゃって、また音が“チクタクチクタク”鳴っているのが印象的で、最後に…。ちょっとネタバレになりそうなんで、はい(笑)。イギリスの史実に基づいた実話なんですけど、なかなか戦争映画っていうと、日本で公開されるときも戦争映画っていうだけで食わず嫌いじゃないですけど、そういった方もいらっしゃると思うんです。けど、ものすごくエンターテイメント作品であり、ドキドキハラハラさせられる映画って意味ではテーマ性っていうのも無視しても楽しめるし、登場人物一人一人にストーリーがあるので、その当時の人間の心情なんですけど、現代の生活で実感できるような作品になっていると思います。

MC:今、岩田さんがおっしゃいましたけど、日本の若い世代にも響いてるっていうのは監督いかがでしょうか?

ノーラン:願わくばどんな年齢の人でも楽しめるような、堪能できるような作品であればと思いますが、特に若い世代に訴えかける映画になっていればと思います。キャスティングをするうえでもよくハリウッドにありがちな40歳の俳優に若い兵士役をやってもらうとかそういうことを今回はやりたくなかったんですね。実際あの現場で戦っていたのは18歳、19歳そこそこの兵士でしたから、今回もキャスティングをする際にかなりいろいろな若者を見てきました。ドラマスクールや演劇学校に行ってみたりとかスカウトしたりとか、まだエージェントがついていないような若い俳優さんを見てみたりとかしました。映画初出演という方にも出ていただいております。非常に大事なポイントでした。というのは戦場の現実というのを見せていかなければと思ったわけです。ですから若い人に共感できればという映画になっています。正に自分と同じ年齢の人たちが、こういう現状を突き付けられた、こういうことをやっていたんだということですから、共感していただけたらと思います。

MC:そして岩田さん。以前インタビューの中でノーラン監督について頭の中をのぞいてみたい人ナンバーワンとおっしゃっていましたがそれはどういう意味なんでしょうか?

岩田:ノーラン監督が作る映画っていうのは画が決まっているって言ったらあれなんですけど、多分この画を想定してどう作り上げていくのかっていうのを結果がわかった上で逆算して撮っていると思っていて。というのもそこに至るまでいろいろなインスピレーションだったりとか、自分の中に表現したいことが明確にないと、しかもあるだけでは具現化できなくて、そこに様々なスタッフや色々な人の協力がないと、この形にするっていうのはなかなかできるっていうのは難しい中で、ハリウッドで商業映画で毎回自分の中で作りたいものを作っている監督って本当に稀有だなって思っていて、そういうところからこの人の頭の中はどうなってんだろって純粋に思ってしまうというか。才能が羨ましいですね。(笑)

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MC:もう、ちょっと(監督が)笑っちゃってますけど、頭の中をのぞいてみたいと。今の岩田さんのお話し聞いていかがですか?

ノーラン:優しいお言葉をありがとうございます。監督業の面白いところはですね、何か一つのことに秀でていなければならないということがないということですね。色々なことに興味を持っていていいわけです。やるべきことは自分の興味を持ったことややり遂げたいことをやるのに才能のある人を集めればいいのです。彼らの意見や視点を束ねることが監督業の仕事だと思うんですね。彼らのいろいろな意見に一貫性を持たせる。カメラでいうならレンズの役割かもしれません。焦点を合わせるところにあるのです。それが上手くいけば非常に洗練された映画ができると思うんです。この映画は何を語ろうとしているのかっていうこと。ヴィジョンを明確にし、いろいろなパズルを合わせるという作業だと思います。他の職業に例えるならば建築家であったりとか、図面をスケッチするのは建築家で、実際現場で働くのは技術師だったりするわけです。あるいは楽団の指揮者に似ているのかもしれません。楽器ができるわけでもないんですが、才能あるミュージシャンを束ねていくわけです。そういった職業かもしれません。

MC:こういう機会はなかなかないですから、聞いてみたいことあると思うので、ぜひ。

岩田:現場感をすごい大切にする監督だと聞いていて、モニターというよりはカメラの脇でディレクションされている。作品作りで最も大切にしていることは何ですか? 

ノーラン:映画作りはいろいろな段階を経て完成に向かうんですが、そういう部分でもいろいろな部分が好きですね。例えば撮影を始めたところではみなエネルギッシュで、始めたばかりですから意気揚々と取り組んでいて、それはそれで現場は楽しいんですが、撮影はしばらく続いていくわけですからそのうち皆、疲弊して疲れ切ってという状態になるんですけど、それがいったん終われば次に編集がやってくるんですね。これも撮ったフッテージをどのように繋げてベストの映画を作るかっていうのを四苦八苦しながら考えながらやっていくわけですが、それも楽しい作業であります。そういったもろもろ監督が関わっていく部分が色々ありますけど、中でも一番好きなのは音のミキシングですね。これは何カ月もかけてやっていくことなんですけど、編集作業は終わっているので絵としては完成していて、サウンドミキシングとしてやっていくのは何千という音をつなげてより良い作品にするにはどうしたらいいのか考えるのです。そしてお客様にとってベストの体験になるようにどうしたらいいのかっていうの考えるわけですけど、充実感のある作業ですね。

MC:もう少し質問あります? 映画のことでも映画を離れたことでも。

岩田:毎日、世界各国を飛び回られていて、映画のことばかり聞かれていると思いますので全く離れたところで、日本の訪れた場所で好きな場所、好きな食べ物ありますか?

ノーラン:前回は家族とともに来て新幹線に乗って、京都の旅館に泊まったんですけど、子供たちも非常にいい思い出になっていて、子どもが購入した木刀で障子に穴を開けてしまった(笑)。でも私としても京都旅行は楽しい思い出になっています。また行きたいと思っています。

MC:時間が迫ってしまいまして、ここで会見は終了させていただきたいんですが、実はですね、ここでノーラン監督から岩田さんにプレゼントがあると、完全にサプライズです。ノーラン監督これは何か教えていただいてもいいですか?

ノーラン:『ダンケルク』の脚本です。中の方にサインを入れております。岩田さん、今日はご一緒させていただいてありがとうございました。優しい言葉もいただけて本当に楽しい時を過ごせました。

岩田:本当にうれしいです。童心に帰りました。

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『ダンケルク』
2017年9月9日(土)より全国ロードショー
監督・脚本・製作:クリストファー・ノーラン
出演:トム・ハーディ マーク・ライランス ケネス・ブラナー キリアン・マーフィー ハリー・スタイルズ

STORY 海の町、ダンケルク。追いつめられた英仏軍40万、撤退を決断。若き兵士トミーは、絶体絶命の窮地から脱出できるのか!? 民間船もが救助に関わった、史上最大の救出作戦が幕を開ける。

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