【全起こし】『LOGAN/ローガン』来日記者会見でヒュー・ジャックマン激白!国境に壁のアイデアはトランプ氏よりも本作が先

6月1日(木)に公開される『LOGAN/ローガン』の来日記者会見が、5月25日(木)に行なわれ、ヒュー・ジャックマンとジェームズ・マンゴールド監督が出席。今回はその模様を全文でお届けする。

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MC:では早速、お2人からご挨拶をいただきたいと思います。まずはジェームズ・マンゴールド監督からお願いします。

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ジェームズ:本日はお越しいただき大変ありがとうございます。皆さんからたくさんの質問を受けることを楽しみにしております。昨夜のレッドカーペット・イベントで日本の皆さんと触れ合うことができ、とてもたくさんの刺激を受けました。『X-MEN』に対し、ウルヴァリンに対し、そしてヒュー・ジャックマンの素晴らしい演技に対し、皆さんのたくさんのご支持をいただき、ありがとうございます。

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ヒュー:コンニチワ。私ハ日本ニ来ラレテ、トテモ嬉シイデス。日本には何度来たか覚えてないくらい来ています。たぶん世界中でいちばん訪れている国は日本だと思います。昨日の晩も大勢の方にお越しいただきました。日本が『LOGAN/ローガン』ツアーの最後の地となりましたが、私にとっても17年間ウルヴァリンを演じてきた、旅の終わりが東京になりました。日本の配給の20世紀フォックス映画のスタッフの方々に感謝すると共に、『LOGAN/ローガン』について皆さんとお話しできることを、とても楽しみにしています。

MC:素敵な日本語での挨拶ありがとうございます。

ヒュー:先程、楽屋で練習した時、私の日本語は95点だって日本のスタッフに言われましたが、残念ながら今の日本語は60点くらいだと思います。

会場からスタッフ:90点はいけますよ。

ヒュー:ありがとうございます。

(会場拍手)

MC:では、これから質疑応答タイムに入りたいと思います。

質問者:ヒュー・ジャックマンさんは、いつからウルヴァリンを演じるのは本作を最後にしようと考えていたのでしょうか。

ヒュー:『ウルヴァリン:SAMURAI』(’13)の撮影を日本でも行ないましたが、あの映画を撮った直後に、ジェームズ・マンゴールド監督と本作の企画について話しました。その時に本作こそ私が演じるウルヴァリンの最終章とするのに最もふさわしいと感じました。最高のパーティーに行っている際に、いつその場所を離れるのか。その非常にタイミングは難しいと思います。でもマンゴールド監督となら一緒に終わらせたい、と思ったんです。勿論、本作が最後になるので、シリーズ最高のものにしたかった。新しくもあり深くもある作品にね。本作は私が思った以上の作品に仕上がったと思いますし、監督から最高の贈り物をもらった気分で、今はとても幸せな気分です。

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質問者:ヒュー・ジャックマンさんがインスタグラムにアップしたアフレコ風景が日本でも話題になりましたが、あの熱演は”最後のウルヴァリン”だったからなのでしょうか。

ヒュー:アフレコはいつも、すごい運動量で汗だくになるんです。本作が特別じゃなく、どの映画もそうだし、他の俳優さんたちも皆同じようにやっていると思います。インスタは、2~3テイクした後でエンジニアの方に撮ってもらった映像なのですが、本当は記念として自分用に撮ったものなんです。後で(インスタグラムに)アップしたら、皆さんが舞台裏にも興味をもっていただけるのではないかと思ったんです。

質問者:ウルヴァリンを演じてきたことはヒュー・ジャックマンさんの人生において、どのような経験になったのでしょうか。

ヒュー:英国演劇界の有名演出家のひとりにサー・トレヴァー・ナンがいます。私が『オクラホマ!』の舞台に出ていた時、彼に”舞台をずっとやっている俳優は5つくらいルーツとなる役を持つ”って言われたことがあるんです。彼はその時、『オクラホマ!』が私にとってルーツのひとつだ、という意味で言葉をかけてくれたんだと思いますが、ローガン(=ウルヴァリン)も私にとってルーツとなる役柄です。本当の意味で私のルーツとなった役柄は、まだローガンだけしか出会ってない、と言っても過言ではないのかも知れません。いちばん最初に『X-MEN』(‘00)で彼を演じた時、私は『X-MEN』のコミックを読んだこともなければ、聞いたこともない。ウルヴァリンという動物がいることすら知りませんでした。それが、これほど長く演じる役になるとは、全く驚きでした。本作が”最後のウルヴァリン”なので、いつか私に孫ができて”おじいちゃん、その『X-MEN』を観るべき”と聞かれた時に、これを観ろとちゃんと言える集大成となる作品にしたかったし、実際になったと思います。マンゴールド監督は私にとって最高の監督であり、最高の脚本家です。

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質問者:監督にとって”最後のウルヴァリン”を獲ることにどんな想いがあったのでしょうか。

ジェームズ:まず、このキャラクターを称えるような作品にしたかったんです。そう考え、従来の伝統的な作り方からは必然的に離れていきました。今までのウルヴァリン映画であれば、この世界や自分を救う話だったりしますが、それはちょっと違うと思ったんです。それはヒュー・ジャックマンも同じ考えでした。毎日”他の作品ではこの手の問題をどう解決しただろうか”自分自身に問いかけ、敢えて違った形を意識しました。

質問者:ローガンと同じ能力を持つ少女ローラを演じたダフネ・キーンの魅力を教えてください。

ジェームズ:隣にいるヒュー・ジャックマン含めて、私は偉大な俳優たちと仕事をしてきたので、直感的にローラを演じられるのはダフネしかいないと分かりました。私がキャスティングする際、重要視するのは役者の思考力なんです。例えば、言葉を話さない状態でも何を思っているのか表情だけで伝えることができる役者を私は選びます。思考力は監督が教えることはできません。役者たちが持っているものです。ダフネに関しては、彼女の父親がスペインのマドリードからiPhoneで動画を送ってきたのですが、そこに映っていた彼女の目に思考力を感じました。ローラはセリフが少ない難しい役ですが、彼女は見事に演じてくれました。本当に素晴らしい役者です。

ヒュー:いい質問だね。監督は脚本も書いていますが、最初は脚本にローラなんて少女は出てこなかった。本作のテーマは家族であり愛です。ウルヴァリンにとって20人と戦うことはたやすいが、家族を持つということは非常に大変なこと。そこから11歳の少女が出すアイデアが生まれたんです。でも一方で、ローラを演じられる役者が果たしているのか、とも思っていました。まずウルヴァリンの激しさや怖さを持っていなければならない。そして序盤では台詞はほとんどなく、ロード・トリップの中で心を開いていく。それを表現することは、ものすごく高いハードルですがダフネはやってのけた。彼女を見つけたことは奇跡だと思います。

質問者:本作は今の米国のメタファーにも思えるのですが、監督は意識されたのでしょうか。

ジェームズ:密接に関係していると思います。悲しいことに、中身が空っぽな映画が最近は多いのですが、私はそういった作品に興味はありません。映画は世相を反映したものであったり、何か挑発的なものだったりするべきです。今作られているシリーズ映画や大作映画の多くは人々の考える力を眠らせてしまっていると思います。

ヒュー:米国大統領選のリベート合戦で、ドナルド・トランプ氏が”メキシコとの国境に壁をつくる”と初めて発言しましたが、あの時、本作の脚本には既に壁の話がありました。我々は未来に起きるSF的な要素としていましたが、誰かスタッフがトランプ氏にリークしたのかも(笑)。それは冗談としても、壁の一件は、監督が政治的なことを考え、世の中全体を見渡した結果だと思います。本作の中には、映画『シェーン』が出てきますが、主人公が”今、時代は変わりつつある”というセリフが使われていますが、それも現代だから響く言葉になっていると思います。

質問者:シリーズ初のR15(米国では17歳未満の鑑賞は保護者の同伴が必要なR指定)となった本作ですが、R15となってよかった点は何でしょう

ジェームズ:多くのファンは、いろいろな制約が取り外されたウルヴァリンの姿が見たかったと思うんだ。私たちは大人向けのドラマを作りたいと考え、今回はR指定で作ることを最初にスタジオに伝えたんだ。スタジオに伝えておかないと万人向けの作品をつくらなければならない。私が脚本を書く際も9歳や13歳、上は40歳も楽しめるシナリオにしなければならない。でも、スタジオが最初にR指定にGOサインを出してくれれば、子供向けに作る必要なない、という共通認識ができるので、言葉遣いや暴力描写だけでなく、自由にクリエイトすることができた。冒頭でヒューとプロフェッサーX役のパトリック・スチュワートが約7分ずっと会話するシーンがあるんだけど、子供向けの作品だと1分半くらいになる。2人の中年男性が延々と会話しているだけなんて、子供たちは我慢できないでしょ(笑)。でも、大人向けの作品ならそれが可能なんです。公開は全世界で日本が最後の場所となりますが、今のところ何も物議は起きていません。それは本作にハートがあったからだと思うんです。ヒュー・ジャックマンやパトリック・スチュワートらの魂あふれる演技も観られます。暴力的な側面もありますが、作品の根底に流れているのは、愛や犠牲の肯定です。

MC:ありがとうございます。ここで、お時間が来てしまいましたので質疑応答を終わらせていただきます。皆さん大きな拍手でお見送りください。ヒュー・ジャックマン、ジェームズ・マンゴールド監督でした。

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『LOGAN/ローガン』
6月1日公開
監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:ヒュー・ジャックマン パトリック・スチュワート ボイド・ホルブルック スティーブン・マーチャント
配給:20世紀フォックス映画

(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation