【全起こし】石橋静河、池松壮亮、石井裕也監督が登壇「石橋静河は、池松壮亮という天才には及ばないけど、新人であるが故の奇跡は起こした(石井)」『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』初日舞台挨拶

5月13日(土)、新宿ピカデリーにて『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』初日上映後の舞台挨拶が行なわれ、石井裕也監督、主演の石橋静河、池松壮亮が登壇。本作で映画初主演を飾った石橋(父は石橋凌、母は原田美枝子という22歳!)をはじめ、饒舌ではないが、3人の熱い思いが言葉の端々に込められた舞台挨拶となった。

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↑左から池松壮亮、石橋静河、石井裕也監督

MC:本日は『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』初日にお越しくださいましてありがとうございます。それでは早速、ゲストの方をお呼びいたします。石井裕也監督、美香役の石橋静河さん、池松壮亮さんです!
ではお一方ずつ、ご挨拶をお願いいたします。
映画初主演となりました、石橋静河さんから。
石橋:本日は、ありがとうございます。…ありがとうございます。
池松:慎二役の池松壮亮です。本日はどうもありがとうございます。
石井:この時代にしか生まれえない映画になったんじゃないかなと自負しております。詩が原作ということもありますので、どのように感じてもらってもかまわないですし、少しでも楽しんでもらえたら、感じてもらえればうれしいです。ご鑑賞、今日は本当にありがとうございました。
MC:今日から新宿と渋谷のみで先行公開となるのですが、映画の中にも、今日皆さんがここまで歩いてこられた新宿の街並みや、渋谷の街並みが出てきて、まさにその街を歩きながら、映画の中に自分がいるような感覚になると思うんですけれど。まず監督に伺いたいのは、この詩集を映画にしようとした際に、なぜ新宿と渋谷を舞台にされたのか、お聞かせください。
石井:個人的に、東京と言えば新宿と渋谷という気持ちがあって(笑)。あとはどうせ撮影するなら最も難しいところというか、街の真ん中に突撃していこうかと。
MC:難しいというと、撮影的に許可だったり、そういうことですかね?
石井:そうです。あんまり詳しく言うと良くないので…。
MC:そうですよね。2つの街を舞台にしたということで。石橋さんと池松さんにも伺いますが、まず石井監督の台本を読んだ時の感想をお聞かせいただけますか?
石橋:そうですね…。私は本当に、本を読むところから挑戦だったというか。これはどういうことなんだろうと、最初は分からなかったんですけど。でも何となく、自分が見たことのない景色があるような気がして、本格的なものを感じました。
MC:台本をもらった段階では、もう詩集は読まれていた?
石橋:読んでました。
MC:詩集を読んだ時の手触りと、台本の手触りでは、どのように感じました?
石橋:うーん、そうですね。本当に”何となく”の感覚が同じだと思いました。
池松:もう、これは傑作になるなと感じました。本当に素晴らしくて、台本ができてからほとんど手を加えていない、初校といわれる状態だったんですけど、もうペンを止めていいんじゃないかと思えるくらい素晴らしかったですね。
MC:詩集は先にご覧になってましたか。
池松:はい、読んでました。
MC:先ほど石橋さんが「同じような感覚を持った」と仰っていましたが、池松さんはいかがでしたか。
池松:これはもう後付けなんですけど、詩集の言葉云々よりも、その奥にある書いた人の物語というか、その奥にある社会、今っていうものが映っていて、すごくおもしろかったですね。
MC:詩集のムードをそのまま映画やドラマにするというのは、なかなかほかの作品ではないことですが、それが見事に表現されていたので、私も映画を観た時にビックリしました。こんなにムードも近づけられるのだと、石橋さんと同じような感想を抱きました。
本作は石橋さんにとって映画の主演デビューとなる作品です。石橋さんと言えば俳優のご両親の家庭に育ったわけですけれども、今日は監督と池松さんに石橋さんという女優について改めて伺いたいと思います。監督、現場での石橋さんの様子、作品のなかで美香として存在していた石橋さんの様子はいかがでしたか?
石井:実力という意味で言えば、池松壮亮という天才には足元にも及ばないんですけど、ただ新人であるということはものすごく貴重というか、圧倒的な魅力で、人生で一度きりしかできない、新人であるが故の奇跡みたいなことは起こしてくれたんじゃないかと思いますけどね。

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MC:現場での様子は? 監督から見て。
石井:こんな感じです(笑)。思い出しました。
MC:石橋さんは普段から静かな、名前とかけてるわけじゃないんですが、静かでいらっしゃるんですか?
石橋:そうじゃない時もあります。
MC:そんな時も見てみたいなと思いましたけど。現場では静かに淡々と役に入ってらしたんですか?
石橋:必死すぎてあんまり覚えてないんですけど(笑)。
MC:池松さんから見て、現場で石橋さんはどのような存在でしたか?
池松:こういう質問ってけっこう難しいんですよね…。簡単にこう、人を説明するのは難しいんですけど。意外と僕は石橋さんのことを知らないなあと思いまして。番宣でよく聞かれるんですけど、3週間一緒にいましたけど、石橋さん本人のことはあまり知らなくて、石橋凌さんと原田美枝子さんの娘さんということぐらいで…(笑)。現場にいた石橋さん演じる美香っていう人に対しては、ものすごく好印象というか、生きることがとても苦しそうで、でも純粋に生きようとして真っ直ぐ立っている、何か好きでしたね。
MC:個人的には自転車のシーンがすごく好きで、違うものだった2人が混ざり合う感じがすごくしていたので、慎二と美香の関係を見ておりました。ありがとうございます。
逆に石橋さんが思う石井監督。作品をご一緒する前と後でイメージは変わりましたか?
石橋:変わりましたね。
MC:どのようなイメージを元々お持ちでした?
石橋:自分が観ている映画の監督ということなんですけど。うーん、何て言ったらいいんですかね…。すごい人なんですけど人間くさいなって思いました(笑)。
MC:石橋さんが発見した、監督の意外な一面とか、これおもしろかったなというエピソードありますか?
石橋:(考え込む)ちょっと、考えます。
MC:分かりました! 池松さんについて意外な発見やおもしろいこととかありました?
石橋:でも私も本当の池松さんというのは多分知らなくて…。私がずっと緊張というか、ずっとテンパっている状態だったんですけど、たまに撮影中に「飲み物じゃんけん」――じゃんけんして負けた人がおごるというのをやって、私は1回も負けなかったんですけど、飲み物をおごってもらいました。
MC:それは何人分くらいおごることになるんですか? 池松さんも負けました?
池松:負けましたね。
MC:どれくらい?
池松:5人分くらいですかね。
MC:それくらいだったら大丈夫ですよね。けっこう現場で「飲み物じゃんけん」の話を聞くんですけど、石井監督、こういうこと多いんですか?
石井:僕は参加しないですね。大丈夫ですか、「飲み物じゃんけん」の話を続けていて(笑)。
MC:すいません(笑)。変なところ掘り下げちゃいまして。
池松:でも「飲み物じゃんけん」って良くないですよね。
MC:そうですね。小学校の時、ランドセル持たされたのと似たような匂いを感じますよね。
池松:あんまり好きじゃないですね。
MC:でも参加されるんですね。石橋さん、監督の何かおもしろかったエピソード、浮かびましたか?
石橋:おもしろかったエピソードは…。
MC:おもしろくなくてもいいです!
石橋:やっぱり、うーん、難しいな…。何でしょう、このままだ30分くらいかかっちゃいそうなんですが。
MC:かけましょうか(笑)。意外な一面とか、意外な演出とか、印象的だった演出とか。
石橋:(考え込む)…。えーと、何ですかね…。
MC:私がすごくいじめているみたいになっちゃうので、やめましょうか。すいません。出てきたもので大丈夫です。
石橋:監督は、皆を見ている人だなと。すごく怖い人だなというイメージがあるんですけど、一人一人をちゃんと見てくれてる人だなと思います。
MC:それは監督の発言から思ったんですか、それとも行動から何か?
石橋:行動です。
MC:どんな時に思ったんですか。
石橋:全部見えている人で。どこに目があるんだろうなっていつも思いました。
MC:監督、それくらい皆のことを見ている人だと。
石井:まあ、そうですよね。でも、すごい沈黙の時間でしたね、さっきの。これ記録じゃないですか、舞台挨拶の(笑)。初めてですよ。すごいですね、新人。現われましたね、大物が。大型新人って言うんですか。
MC:それは現場でも感じることありましたか?
石井:フラッシュバックしましたからね、今のこの様子で。大変でしたよ。
MC:それは何が大変だったんですか?
石井:今お困りになられてたようなことで(笑)。そういう感じでしたよ。
MC:監督も一気に汗をかくような状況になられて?
石井:なってましたね。(石橋が)ずっと緊張してましたしね。大型新人ですから。
MC:石橋さんは現場で緊張されてたとさっきもお話されていましたが、それはどの辺りのことで緊張されてたんですか?
石橋:(沈黙)
石井:(苦笑)
石橋:常に監督とある意味戦っているような感じで、いつもトライ・アンド・エラーとかやってみてと言われて「違う」と言われて、「違う」って言われて、「違う」って言われて…。止まっちゃって、そういう感じでした。

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MC:池松さんは何度か監督とご一緒されていて、しかも関わっている作品が前作だったり前々作だったりして、割と近いところでお仕事されていますけど、今回の作品の中での監督は、どのように池松さんから見えていましたか?
池松:今回はですね、これは伝わるかは分からないですけど、石井さんがたどっているストーリーの中では、すごく新しい挑戦、石井裕也の感覚的なものを映画として皆で表現できたんじゃないかなって思っています。
MC:監督は最近、脚本はほかの方にお任せすることもあるんですけど、本作は脚本も担当されていますが、それはやっぱり感覚的なものというか、池松さんも仰ったようなことを吐き出したい、そういう思いがあったんでしょうか?
石井:そうですね。詩が原作ということで、詩は読み手によって解釈が違うはずで、自分の感性とか感受性とか、経験みたいなものが影響してくるものですからね。そういう意味では、僕がやらなきゃいけないと思いましたし、僕の感性が試されたというか、そういう印象ですね。
MC:石橋さんにとっては主演のデビューとなったわけですが、石橋さんにとっては今後、どのような作品になりそうですか。
石橋:やっぱり、ずっと心の中にあるというか、忘れたくてもある意味、忘れられない感覚だったり、始まりだなと思います。
MC:ありがとうございます。では最後に石橋さんと池松さんに、皆さんにメッセージをお願いしたいと思います。
池松:今日は本当にありがとうございました。昨今、いろんな若者向けの恋愛映画が日本でつくられていますけど、そのどこにも属さない稀有な作品ができたと思っています。今をどう生きるだとか、人と人とがどうつながるかだとか、そういうものをこの映画を通して僕たちも探して、何かひとつ答えを見つけることができたんじゃないかなと思っています。ほかのどのメディアでもできない、人間賛歌になったと信じております。ありがとうございました。
石橋:今日は本当にありがとうございました。いろんなことがうまく説明できないし、私の中で大きな思いがあるんですけど、うまく言葉にできません。でも私は本当にこの映画でたくさん苦しかったし、たくさんいろんな人に迷惑をかけたし、でもたくさんこの映画に救われたので、もっといろんな人に届くといいなと思います。ありがとうございました。

『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』
2017年5月13日より 新宿ピカデリー、ユーロスペースにて先行公開。5月27日より全国ロードショー
監督・脚本:石井裕也 原作:最果タヒ「夜空はいつでも最高密度の青色だ」(リトルモア刊)
出演:石橋静河 池松壮亮 佐藤玲 三浦貴大 ポール・マグサリン 市川実日子 松田龍平 田中哲司
配給:東京テアトル リトルモア

(C)2017「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」製作委員会