【全起こし】『食べられる男』連日イベント⑥ヨーロッパ企画 上田誠&永野宗典が登壇!「本多さんの、ウブさ、モサさ、純情さ、魅力全部詰まった作品でした」

2017年5月5日 K’s cinemaにて、ヨーロッパ企画の本多力主演映画『食べられる男』のトークショーが行なわれ、ヨーロッパ企画の上田誠と永野宗典が登場! 脚本や編集などに協力した2人が、本作が出来上がるまでの裏話や完成版を見ての感想を語った。以下全文!(ネタバレ注意!!!!!!)

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近藤:どうしてこのお2人をお呼びしたかといところからお話したいんですけども。まずは僕が大阪芸術大学を卒業しまして、翌年にCO2っていう大阪市の助成金を受けられるシステムがあるんですけども、そこに提出するために企画を考えて、企画が無事に通ったあとに製作を進めていくなかでオーディションで本多力さんに来ていただけることになって、主演でお願いして。ヨーロッパ企画さんがあとあと入っていただけるとなって、上田さんとかに脚本とかを協力していただいてっていう流れがあるんですけども。永野さんにもいろいろお手伝いいただいて。
永野:そうですね。
近藤:上田さんは僕と小村2人で脚本をずっと書いていたんですけども、上田さんに1回見てもらったりして、どういうところをこうした方が良くなるよとか、っていうことを言ってもらいながら脚本書いていったんですよ脚本の最初の印象ってどんな感じでした?
上田:最初に本多君が出演するっていうのを聞いて、あーそうなんだなって思ってたら僕も、いつぐらいでしたっけ? クランクインの1週間前とかそれぐらいのときに入らせてもらって。読んだときは、面白かったんですけど、本多君がしゃべるのかしゃべらへんのか、そこって微妙なところじゃないですか。どれぐらいしゃべったらいいんかというか、っていうのと、映画全体のテーマというよりは、単純にここの会話カットしたらもうちょっとテンポよくいくかもなとか、そういうことばっかりたぶん僕は話してたような感じがしてました。
近藤:それを持ち帰って2人で脚本書き直して、っていうのを何回か繰り返してクランクインしました。
上田:そうでしたね。あと食べられるっていうときに、悲しみが満ちてくるような感覚なのか、空っぽになっていく感じなのか、どっちすかねーみたいな話を割としてたっていう。
近藤:そうですね。イメージとして瓶みたいなんにどんどん入っていくっていうイメージなんか、グラフで伸びていくイメージなんか、みたいなそういうところをいろいろ言ってもらって。
上田:なんか大体の話ができてたんで、細々調整するならこういうところっすかねーみたいなことを言わせてもらったんですかね。
近藤:なんか思ってもないようなことをすごい角度から言ってもらって、より深まったと思ってます。
上田:とんでもない。1回出来上がったものも、それこそ永野さんとか見て、皆で編集も。
近藤:一番最初出来上がったときは120分ぐらいあって。それを100分ぐらいまで切ったものを見てもらったんですけど、いろいろと厳しいご指摘もいただいて……。まず一緒にお仕事できてるっていう緊張があったし、その人らに見てもらってどんな意見飛んでくるんやろうって思ったら、こと細かにバーって書かれていて、それを基に編集させていただいたっていう。
上田:そうでしたね。もう撮り終わってるのにですよ、台本のこの1行抜いたらこうなってこのカット割したら編集できるかもしれませんとか(笑)。
近藤:いやでもそのとき上田さんすごいなって思って、本当に編集を見てもらってシーン1からシーンの最後まで、ここのシーンのここがこういう切り方したらこう変わってくるからって全部細かく書かれていて分かりやすく。でも僕らがここは残したいなっていうところを残しながらやったのがこういうかたちになって。
上田:そうですよね。でもやっぱり印象としては頑固っていったらあれですけど、そんな印象ですよ。それは悪いことじゃないですよ全然。ごめんなさいね、なんか。言って全部反映されたらなかなか言いにくいですけど、言っても全然変わらないところは変わらないんで、そこは大事なとこなんで、僕やったらこうしますよみたいな。
本多:上田君もいい意味やけど頑固で、だからいろいろなこと言われても自分で持ち帰ってここは採用するし、ここは採用しないしっていう。たぶんそういうタイプやと思ったらから結構言いやすかったみたいなところもあるのかもね。
上田:まぁそうですよね。
本多:永野さんどうでした?
上田:2バージョン見てるわけですよね。
永野:大阪で最初見させてもらったとき100分あったのかな。で、今回のが83分ですか。だからね、どこ切ったのかっていうのがそこまではっきり分からないぐらいすごく馴染んだ感じでカットされていて、最初見たときは食べられるまでの1週間をすごく丁寧に見せていた。長回しで撮ってるカットも多くて。その良さもあったんですよ。工場のムードとか、村田の悲哀みたいな淡々と生活を送ってる退屈な感じとかすごい伝わってきたり、そういうのはあるんだけど、それが1週間どん、どん、どん、とくるんで、今、3日目かっていうようなね。そういう感じにならずに、次行った、次行ったってなんかすごく気持ちいいテンポで日が進んでいって、僕が見たいテンポより食い気味に日が進んで行ったから、あ、食べられる!っていう食べられる日が近づく!みたいなそういうプラスの作用があったから。
上田:めちゃくちゃ感情移入してるじゃん。
永野:いやいや良かったんですよ。
近藤:恐怖感がどんどん。
永野:そうそう。ストーリーもぐっと感情移入もできて段々家庭のこととか見えてくるじゃないですか。幼なじみとの関係性とか。積もり積もったものとかもどんどん溢れ出していって、すごい人間味が出てきたりとかそういう展開もしてきたんで、すごい見応えが増していて。僕はこのラストシーンが好きなんですよ。それはもう100分バージョンから好きだったんですけど。最終的に中華風に味付けされて村田は食されるんや、というような、そんなギューンとヒューマンな感じで、銅鑼がドーンって鳴って。
近藤:脚本には中華風とかは書いてないんですよ。
上田:中華風はなかったですよね。
永野:丸焼きでね。
上田:全然ない文脈が急に。
永野:そうそう、違う映画かなっていうぐらいすごく大胆なことしてたから、それが痛快で。だからラストシーンがより気持ちよくて、僕は楽しませてもらったんですよね。
近藤:ありがとうございます。

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永野:で、本多君もね20年ぐらいの付き合いですけど、ほめられるの待ってましたよね? ちょっと。
本多:そうですね、早く、中華はいいから早く本多に来てくれって思ってました。
上田:そうずっと長い短いみたいな話していて(笑)
永野:本多さんの魅力が詰まった作品でしたよね。なんていうの、ウブさ、モサさ、モサさでしょ、純情さ。
上田:モサさっていうパラメーターがあるんや(笑)。
永野:あるんですよ、六角形ぐらいのやつでありますけど。
本多:そのうちの1個がモサさなんですね。
永野:モサさが、いやもう全部。
上田:それ高いといいんですか?
永野:この作品はモサければモサいほど、やっぱり映えるキャラクターだから。
近藤:上田さんはどうですか?
上田:本多君ですか? 本多君って難しいんですよ。いつも。
本多:そうなんです。ヨーロッパ企画のときは、群像劇なんで主役はあんまりないんですけど、そのなかでも主役みたいな役か、最後の7分に出てくる役かのどっちかで。
上田:役者さんによっては、大体群像に馴染んで、例えば永野さんやったら小者だなとか、そこらへんの配置がパッと決まる。
永野:小者ですね、使いっ走りとか。
上田:みたいなので収まりますけど、本多君はどういう役の人なんだろうっていうのがあんまりいつも思い浮かばなくて、思い浮かばないまま18年ぐらい一緒にやってるんですけど(笑)。
本多:でも思い浮かんでないっていうのをほかのメンバーづてに聞くんで、今日初めてです面と向かって。
上田:そうか食べられる人かーっていう感じですよね。新しい一面ですよね。
永野:シャウトも似合うしねこう見えて。
近藤:あ、叫ぶ。
永野:シャウトが似合うじゃん「食えよー!!!」って。もう感情こもりすぎてさ、「きゅえよー」になってたもんね。かっちょよかったよあれは「きゅえよー!!!」って。
近藤:すごい現場ではリーダシップ取ってくれて。僕ら同い年ぐらいのスタッフで大阪芸大のスタッフでやってたんで本多さんが最年長で、一番引っ張っていってくれてたんです。
上田:そうですよね。だから結構シーン数も多いし大変じゃないですか。かなりつくり込んでっていうか、それは仲間の?
近藤:仲間で根性でそこは、根性だけで乗り切りました。年越しの瞬間も撮影してたんで。
上田:え、そうなんですね。
近藤:あ、瞬間はしてないですね。でもクリスマスとは一緒に。
本多:でもクリスマスってなんか(笑)。
近藤:本多さんがピザ買ってきてくれて。
永野:クリスマスの帽子かぶってましたよね劇中。
近藤:本当にシーズンだったんで。
本多:でも大阪芸大の現役の学生の子もいっぱいスタッフで来てくれてたんで、最終のクランクアップの日が成人式の日やって、一番人が少なくて、だから寂しかったっていう思い出が。皆、成人式に行っていて。
上田:あ、本当に年またぎでやってたんですね。
本多:楽しかったですよ。ずっと泊まり込みで、皆で。
上田:あれラストシーンに向かってつくっていくんですか?
本多:大体、要所要所は順取りで撮って。
近藤:大事なポイントをまず初日とか2日目とかでバーッて決めて、ここの順番は入れ替わらんように撮影するみたいなんはちょっと意識して。
上田:やっぱりそこは気持ちというか。
近藤:そうですね、本多さんがやりやすいように。弁当食べるところとかも、ラストの、あのとき本多さんは前日から何も食べずに来ましたって言って。
上田:えっ!!
本多:前日からっていうのが恥ずかしいですよね。
上田:いやでも大事なアプローチっていうか。
近藤:もうその日はそのシーンを撮るっていう日やったんで、気合い入れて来ていて。僕も気合い入っていて、1回しかやりませんみたいな感じの空気で、もうお任せしますっていう勝負の瞬間でしたよね。
上田:あのシーンって1回もカットもなく、どんな感じだったんですかやり終えたときっていうのは。
近藤:途中で本多さんが本当に涙を流しはって、そのときにこのシーンでなんとかこの映画成立するかなっていう気になったっていう。
上田:なるほど。
近藤:で、あんまり長かったら切ろうかなと思ってたんですけど、撮る前は。実際見ていたら見れちゃうなって、人が弁当食べてるところって。
上田:そうですね。
近藤:編集でもこれ全部残して、長さとか映画の面白さとか1回抜きにして、このシーンがあるっていうことを意味として残しておきたかったっていう。
上田:そう、最初3分くらいかなーって最初言ってたら、食べるのに。
近藤:7分。
上田:7分かかちゃって。
永野:あ、あれ7分あったんだ。
近藤:あります。
永野:骨を食べるまで台本に書いてあるんですか?
近藤:そうですね。
本多:最後に骨を食べてくださいっていうのは指示があって。食べてたら白飯が全然減らなくて。
永野:白飯ね。白飯見てた僕も。白飯の減らなさ具合を。
本多:減らなさとすくえなさ。
上田:邪念ありまくりじゃん(笑)。
永野:減らねーなーっていう涙もあったの?
近藤:演技で初めて泣いたっていってました。
上田:よう泣きますよ、普段。
本多:普段はすぐ泣くんですけどね。ほかのスタッフの方を皆、部屋から出してくれて、監督とカメラマンと美術の人と僕だけっていう。
上田:けど4人もいるんや。監督とマンツーかなと思ったら。カメラ据え置きでマンツーだったんかなって思ったけど。
本多:マンツーはマンツーで恥ずかしいから、そこは2人くらい水増ししてくれて。
上田:なるほどなるほど、ちょうどいいバランスで、温度感がね。いや好きなシーンでした。
近藤:こうやってヨーロッパ企画さんとお仕事できて本当に良かったと思います。
上田:いやこちらこそ。
永野:こちらこそですよ。
上田:いい経験でありがとうございます。
近藤:僕の劇場公開デビューということで、こうやっていろんな人に見に来ていただいて最終日ということで、やっと僕は映画監督になれたと思っています。
全員:おめでとうございます。
近藤:そろそろお時間がきたみたいので、ちょっと小村(脚本)の方から。
小村:ここで告知というかパンフレットを販売しておりまして、中身に本多さんと監督のインタビューだとか、よく質問をいただくP星人の細かい設定などを書いてます。あとシナリオが丸々、最終稿が載っていて、泣く泣くカットしたシーンとかあって、ひと:みちゃんとかもっとしゃべってるんですけど本のなかでは。そういうのが入ってます。これが700円で販売してますので良かったらぜひお買い求めください。そしてロビーの方でサインの方も監督と本多さんもさせていただきますので、感想なども伝えていただければ幸いです。あとポスターも500円でB2のでっかいやつが販売してます。
近藤:(小村は)P星人の母役でも出てました。
小村:あ、そうですね。P星人の母役で。
永野:母? 母っぽいのあった?
近藤:一番右が。
小村:やらせていただいたんで。
上田:なるほど、雌雄があるということも今、分かりましたね。
小村:ぜひともお買い求めください。よろしくお願いします! 今日はありがとうございました。
近藤:本日はどうも見に来ていただいてありがとうございました。これからもよろしくお願いします!

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2017年5月5日 K’s cinema

『食べられる男』
2017年4月29日~5月5日 新宿 K’s cinemaにて 連日21時 1週間限定レイトショー
監督:近藤啓介 出演:本多力 時光陸 吉本想一朗 ひと:みちゃん 中野陽日 石川ともみ 川口新五 杉山まひろ 申芳夫

※今後、東京ほか各地で上映予定! 決まり次第『食べられる男』サイトでご報告いたします
公式HP:http://www.europe-kikaku.com/taberareruotoko/
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