【全起こし】石井裕也監督×池松壮亮 オールナイトイベントでぶっちゃけトーク「ここまで本音で話すことは以後ないです(石井)」「やり残したことは石井さんからメダカをもらうこと(池松)」

ゴールデンウィークも終わりに近づいた5月6日(土)の夜から7日朝にかけて『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』応援企画 「石井裕也監督作品オールナイト」が開催され、トークイベントに、石井裕也監督と石井作品に4度出演している盟友・池松壮亮が登壇。立ち見も出る満席の観客を前に、深夜3時過ぎからステージに上がり、“池松壮亮丸裸企画”と題して、石井から池松へさまざまな質問がぶつけられた。以下はその全文。

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MC:本日は、石井裕也監督オールナイト上映にお越しいただきましてありがとうございます。短編集が終わったところで先ほどご挨拶致しました石井裕也監督と池松壮亮さんによるトークショーを行ないます。それでは早速お呼びします。石井裕也監督と池松壮亮さんです。

石井:夜遅くにすみません。どうでしたか短編集は。

池松:いやー、なんかねー泣きそうになりましたね。22歳から24歳ですよね?

石井:そうですよ。

池松:ずっと天才だったんですね。

石井:そうなんです(笑)。バカげてますけどね。

池松:やってること変わらないです。

石井:もうちょっとほめて。

池松:ずっと、おっきー(沖原正純)が雄たけびを上げてたんですよ。ずーと5分に1回くらい。

石井:大阪芸大の同級生なんだけど、本当、困りますね。

池松:今の(短編集)美術は全部おっきーが?

石井:いやいや全部ではないけど、ちょっとね。『東京の空の雲はナタデココ』とかどうでした?

池松:一緒に隣で見てた『夜空はいつでも最高密度の青色だ』の石井純っていう助監督がいるんですけど、彼が「“夜空”の原型だ」って言ってました。

石井:そうそうそう、そうなの。

池松:俺もそう思いました。

石井:なんか怒りに任せてたし自由に。20代前半だったから。でもなんか倫理観に基づいてたんだなって、すべて。そういう意味では、今見返しても誇らしい。いやでも本当バカげてるって思ってもらって構わないんですけど。でも『ぼくたちの家族』とか『舟を編む』とかの対極にああいうものがあったっていう、幅っていうところ? 20代のときに結構言われたんだよね、“何マジメになってんですか”みたいな。いやいやいや、結構やってますしこっちもっていう。

池松:対極だとも思わなかったですけどね。全部つながっているように感じましたけどね。

石井:じゃあ40分しかないから“池松壮亮丸裸企画”いきますか(笑)。こんなに書いてるから質問。対談のときにはいろいろ書いてる。じゃないとさ人様の前でお話しするし、ね? あれでしょ? じゃ1個目の質問いいですか?
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池松:あ、もう始めますか。

石井:時間もないんで。(観客に)トイレ大丈夫ですか?

池松:ご自由に行ってもらって。40分もあるんですからね。

石井:いやーされど40分ですからね。ま、でも最後の上映は『舟を編む』なんで皆さん寝ていっても構わないですけど、最後はいい映画ですから本当に。じゃあ1個目の質問いいですか。

池松:はい。

石井:メダカ飼ってるじゃん俺。

池松:(笑)そうなんですよ。僕はもう半分衝撃的で半分分かってたんですけど。石井さんがメダカを飼い始めて、それがすんごいショックで。

石井:最近あったかくなってきて11匹生まれたんだよ子供が。

池松:(笑)

石井:で、それをメールで池松君に報告したときに、すごい批判的だったよね。ものすごい批判的で。でも俺は何も言わなかったのそのとき。なんでそんなに嫌なのかっていう。でもほんとうに批判的だったよね。それをちゃんと今言ってほしい。

池松:それはなんかね役割として、否定しなきゃいけないと思ったんですよ。

石井:もうちょっと言って。

池松:あのー、アカデミー賞ね、最年少で最優秀取った石井裕也が、今、メダカを飼ってると。どうやら弱ってると。寂しいんだと。メダカを飼い始めて、で、僕に報告してきて、子供が生まれたら池松君にあげるからって言われて、僕はもうお願いだから川に流してくださいと、言ったんですね。そんな石井さんは見たくないと。

石井:なんでそんな、別にいいじゃんメダカ。

池松:いや、いいんですけど、でも石井さんが飼ってほしくないんですよ。

石井:その“石井さん”っていう、いわゆる理想っていうかさ、俺に対しての理想みたいなのがあって、そこにメダカを飼うってことが反してるってことでしょ?

池松:んー反してますね。

石井:それもちゃんと説明してほしいんだよね、皆さんに。

池松:だから僕も飼いたいんですよメダカ。

石井:ちょっとほだされたんだよね。

池松:はい。

石井:子供が生まれたらあげようかって言ったら、少し懐柔したというか。

池松:できればね、世間的に言うと犬ですか? 猫ですか? なんかペットに愛を注ぎたい気分はあるんですけど。

石井:それはでも、猫とか犬を池松君が飼ったら俺ヤダな。

池松:いや俺は飼ってないんであれですけど(笑)。

石井:飼い始めるって言ったら嫌だな。それはお互いの理想を押し付け合ってるってことじゃん。

池松:そうですね。でもなぜメダカだったのか。

石井:もらったから。もらって子供も生まれちゃったし。

池松:それはじゃあ犬か猫だったら、いただけなかったんですか?

石井:そうだね。もうちょっと言ってよ。なんでメダカがそんなに嫌なのか。

池松:なんかねー、石井さんとメダカっていうのがリンクするようでリンクしないようで、やっぱりリンクするんですよ。

石井:小さいから?

池松:いやいやいや違う違う。寂しくて。

石井:寂しい? 俺が?

池松:いやいやいや、メダカが。メダカも。

石井:だってどんだけ飲んでも帰るよ。

池松:そうなんですよ。だからこないだ石井さんと久々に飲むときに、「あ、ちょっと待って俺、メダカに餌あげてくる」って一端帰ったんですよ。うわ、すごい本気だと思ってびっくりしました。

石井:いや春で産卵シーズンなんで、大事なときだから。

池松:これを俺がもうちょい。。んーーー。

石井:じゃ、次の質問いきましょうか。いっぱい書いてありますから。海外3連発行きましたね。

池松:次の、“夜空は”~みたいな映画で、ベルリンにまず行きまして。

石井:ドイツ、ポーランドに行きましたね。

池松:そのあとね、石井さんの友達のパクさんっていう韓国の映画監督であり、映画俳優である人のところい会いに行ったんですよ。

石井:一緒に行こうっていってね。それで4月が香港映画祭か。1カ月に1回池松君と海外旅行に行きましたね。で、それはなんでだと思いました? 俺、熱く誘ったじゃん。それは何でだと思った?

池松:何でだと思った?

石井:だって1カ月に1回海外旅行に行く友達っていないでしょ?

池松:なんかねーやっぱ、僕の立場だけで話しますよ。僕がこうやって日本で俳優をやっていて、今回のプロデューサーの孫さんって方がいるんですけど、孫さんと石井さんからもっと広い世界を見てこいって言われたような気がしましたね。

石井:そうなんだよ。結局、海外とかに行くと「お前は誰なんだ」「お前の映画って何なんだ」っていうこの2つの問いを突きつけられるでしょ。池松君はもう日本の映画界の枠組みからはみ出るくらいの才能があるから、それでいろいろ問題も抱えているなかで、改めてそういう問いをされてほしいなっていうところで。

池松:すごくいいタイミングだったし、石井さんに試されている感じはずっとしてますよ。

石井:ポーランド行ったじゃん。アウシュヴィッツに行ったんだよ2人で。

池松:ユダヤ人強制収容所。

石井:あれは一泊二日だったけど、もう2人だけだったんだよね。映画祭関係なく。

池松:はい。

石井:アウシュヴィッツ行って、そのあとクラクフっていう街でポーランド料理屋に行ったじゃん。

池松:行きましたね。

石井:そのときに、ずーっと池松君が黙ってるから、ご飯が美味しいのに。池松君がね「ちょっと情報量が多すぎて咀嚼しきれないんです」ってボソッて言って。で、ぱくぱくポーランド料理を食べて。咀嚼しきれた?

池松:んー、まだしきれてはないですけど、完全には。とはいえ、あのときに感じたことをどうフィードバックできるかなっていうことをずーっと考えてます。

石井:なるほど。アウシュヴィッツって皆さんたぶんご存知だと思うんですけど、ユダヤ人の強制収容所で。俺たちのテーマがあったじゃん。ある人は、あるいは歴史の中でこういう人がいたとか、そうんじゃなくて、俺だったらやったか、あるいは俺だったらやられたかって主語を変えようって。

池松:人を殺したか、殺されたか。

石井:そういう人もいたとかじゃなくて、そういう人もこれから出るかもしれないとかじゃなくて、俺だったらどうするかっていうところ?

池松:そこがテーマでしたもんね。

石井:2万5000歩くらい歩いた。結構歩いたんですよアウシュヴィッツで。池松君が結構考えてたから、あー来てよかったなって思ったの。もうちょっと説明してもらっていいですか。アウシュヴィッツの。

池松:アウシュヴィッツの説明? いやだからアウシュヴィッツは皆さん行った方がいいと思いますよ。だからさっき石井さんが言ったことに付け加えると、もちろん自分は何者なんだっていうこともそうですけど、あとなぜ生まれたか。なぜこの時代に生まれたかっていうことを、なんかあの場所で問われた気がしましたね。

石井:そうなんだよね。やっぱり行ってみなきゃわからないしね。

池松:あとお前に何ができるんだっていうことを問われた気がしました。

石井:そうそうそう。それって結構重要で、俺も一応先輩として、7個ぐらいですか?

池松:はい。

石井:まぁやれることはやったかなって。この海外3連発で1回終了だね。あとはもう考えてやってほしいなって。じゃ次の質問いっていいですか。
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池松:はい。何個ぐらい質問あるんですか。

石井:いやすげーあるよ。消したりしていろいろ考えてるから。40分ですからね。

池松:(観客に)眠たかったらもう寝てくださいね。

石井:本当にそうなんです。すいません朝まで。本当に感謝してます。俺、池松君のことを特別視してるでしょ。ほかの俳優とは違う次元って考えてるんだよ池松君のことを。それは何でだと思う?

池松:うーっわ。

石井:その心を教えてください。俺も分かってない部分があるから。2つあるんだよ答えは。でもそれを言う前にまず本人から。

池松:じゃ僕がなぜ石井裕也を特別視してるかを答えていいですか?

石井:いいよ。違う違う逆だよ。俺がなんで池松君のことを特別視してると思うか、本人の口から聞いてみたいの。

池松:何でなんですか?

石井:じゃヒント出します。『ぼくたちの家族』って今日、短編集の前に上映したでしょ。それで池松君はそのときまだ21歳ぐらいで今ほど世間にバーッて出てきてなくて、でも俺は、もう池松君でやるって決めてたから。なんか決めてたんですよ。そのときに池松君からきたメールが印象的で。『ぼくたちの家族』っていう映画は、小説家の早見和真さんの実話なんですけど、俺の家族とも割とシンクロしていて、俺も2人兄弟で次男坊で。で、池松君のメールでね「これはたぶん石井さんの分身だと思うので、分身でやった方がいいと思うし、もしそれに俺が見合わなかったら切ってください」っていうメールだったの。ここからまず俺はマジになるわけでしょ。それで撮影が全部終わってその次の日かなんかに打ち上げをしたんだよね。俺そのとき司会やってたの。

池松:してましたね。

石井:監督兼司会ですってケラケラやっていて、それでいろんな人にコメントを求めていて、池松君に振ったときに、池松君がさ、しゃべり始めて7秒後ぐらいにベロベロ泣き始めたの。それ覚えてる? いやもう本当に泣き始めたの。それでおれの母ちゃんは、俺が7歳のときに死んでるんだけど、そういう話を撮影前にしてたのね。原作者のお母さんも編集中かなんかに亡くなっちゃったのね。それでさ、初日の舞台挨拶で池松君が「今、映画が完成して、原作者の早見さんのお母さんもどこかで見てくれていると思います」って言って、「石井さんのお母さんもどこかで見てくれていると思います」って言ったの。俺びっくりして。そこまで考えてたかってさ。

池松:そこまでっていうか、普通の本音です。

石井:でも衣装合わせで俺が履いてる靴とか履こうとしてたじゃん。

池松:うーん。

石井:やっぱり俺になりたかったんだと思うんだよね。

池松:(笑)
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石井:だから、俺が池松君を特別視してるかっていうとそういうわけではないと思う。だけど、それは何かのきっかけなのか分からないけど、特別視してるわけ。今、ヒント言ったじゃん。はい言って。

池松:いやー、今のはヒントになってないですけど(笑)。何かがリンクしたんですよ。僕は10代からこの世界に入ったんですけど、この世界で仕事をする人たちはもうおじいちゃんばっかりだったんですよ。おじいちゃんの現場に行って、おじいちゃんたちに育てられて、何とかここまでやってきて、18歳で東京に出てきたときに、いろんな映画があることを知って、たくさん見あさってるときに石井さんの映画に出会って、なんだこの人は?って調べたら、今まで仕事してきた人のなかで一番年が近くて、なんだろうこの感覚はっていうところで、今に至るわけですけど、、、説明して?、、今日、石井さんのファンの方もいらっしゃると思うんですけど、んーなんかねいまだに言葉が本当に見つからないんですよ。これはもういろんなところで言ってますけど、なんで石井裕也という人は、僕がずっと抱えてきた気持ちを映画として、なんで僕の気持ちを代弁してくれるんだろうっていうことでしかないんですよね。

石井:そうですか。今。皆さんお気づきだと思いますけど、池松君、今日饒舌ですから。池松君ってサッカーとやるときにドリブルで1対1になったときに「ウリャーー!!!」って言うでしょ。叫ぶわけですよ。明るいところも持っていて。にもかかわらず潜ませようとするわけじゃん。怒ってるしムカついてるし、孤独だしっていうのをたぶん本人抱えてるんですけど、それを隠そうとしてっていうか、魔封波じゃないですけど、封印しようとするわけですよ。俺はそれはすごく、今の時代の俳優の在り方として正しいと思っていて、本音みたいなものを封印するわけですよ。でもさそれが漏れちゃうときってあるでしょ。

池松:それが漏れたときに石井さんは映画にしたんですか?

石井:そうなんですよね。でも俺の方がもう少し池松君より自由、というか、封印の度合が少なくてすむというか。

池松:そんなことないと思いますけど。

石井:いやあるよ。池松君は封印して、でもたまにドクドク漏れちゃうときがあって。でもそれで唯一無二の存在としてやっていけばいいんじゃないかなって思うけどね。きついと思いますけど。

池松:いえいえいえ。

石井:いやきついよ。俺だったら嫌だもん。

池松:俺は逆はできないですから。

石井:顔ってあるでしょ特に男はさ。何て言うんですかね、有無を言わさぬ直接的暴露みたいなところあるでしょ顔って。男の生き方とかはやっぱり出るから。女の人は化粧とかもしたりするから、ある程度誤魔化せるかもしれないし、整形とかもね。ま、男もできますけど。そういう意味じゃ池松君っていうのは有無を言わさぬ直接的暴露みたいなところをひた隠しにしようとするんでしょ。それでいいんじゃないかなって思うけどね。それについてどう思いますか?

池松:まぁ半分ぐらいそれでいいんじゃないかって、それでもうちょっとやってみようって思わせてもらえてるからここまでやってるんですけどね。

石井:なるほど。

池松:どこかでコロッとやり方を変えるかもしれないし、それは分からないですけど、もうちょっとやってみようとは思ってます。

石井:じゃあどういう人がファンだと思いますか? 池松ファン。どういう人が池松君を好きだと思いますか?

池松:少なくとも雄たけびは上げないですよね。

石井:(客席を見ながら)8割型は池松ファンですよね。

池松:いやいやそんなことないですよ。

石井:にもかかわらず“キャー”とか言わないですからね。もうちょっと開放していいんじゃないですか? 場合によっちゃ。

池松:なんか石井さんに言われたのは、池松君を見にくる人たちは前に出過ぎないと、ちゃんとわきまえていると、品があると。なんか前、散々その話になりましたね。

石井:そうだね。だからそれは知性なのかな。池松君を好きな人に知性があるからそうなのか。なんだと思いますか? ちょっと考えてください20秒ぐらい。

池松:そうですね。少なくともこんなんにキャーって言ってもねー。

石井:なんかストッパーみたいなのがあるんじゃないの池松君ファンに。それはなぜなのかっていうのをもう少し考えてほしいよね。

池松:いや割と考えてるつもりですけどね。

石井:もうちょっと開放してって思ってるかもしれないけど。

池松:いや、僕は全然大丈夫なんですけどね。全然そんなこと。

石井:でも確かに韓国で2人で歩いてたときにさ、ある日本人の女の人がやって来て「わー池松壮亮じゃん! かっこいいんだけど、ヤバいんだけど、かっこいいんだけど、ヤバいんだけど」って来たとき池松君引いてたよね(笑)。それは覚えていて。

池松:でもそんなねー。どう見られようがもうしょうがねぇみたいな。どう見られたって構わないってことはとっくの昔から思ってますからね。表に立つ以上。

石井:俳優だしね。

池松:勘違いされるだろうなとも思うし、こんななんか偉そうにしてたら。

石井:偉そうだとは思わないけど。

池松:フー。これを続けるんですか。

石井:続けますよ、だってまだ。

池松:俺ひとつ聞きたかったのが、この上映順は石井さんが決めたんですか?

石井:そうそう。

池松:この順番がすごいなーって思ったんですよ。

石井:『ぼくたちの家族』っていうのは20代のときのある種の最高到達点でしょ。もうこれで20代やり残したことないと思えたぐらいの映画で、その対極みたいなものを選びたくて、短編集。

池松:僕が言ってるのは、短編集の順番。

石井:あー。なんかね、もはやもうこの何倍もつくってきて、20代のときに。

池松:何本つくったんですか?

石井:覚えてないぐらい。そして残ってないんだよね。今みたいにパソコンとかに残せる時代じゃなかったから。覚えてないんですけど、でも『グレートブリテン』とかすごいからね。

池松:すごかったですよね。もう最後泣きそうになりましたらからね。

石井:『グレートブリテン』で?

池松:はい

石井:なんでこの(ほっぺたが)バカボンみたいになってたんですかね。

池松:なんでやったんですかね。

石井:なんでやったのか俺も分からないんだよね。でも見てることってすべてじゃないよねってことがあって、別にここに変な落書きとかされてても、感動できる可能性もあるし、逆に感動させるためにそれを消さなきゃいけないのか。とかさそんなことまで考えてさ。

池松:なんかうまく言葉にできないですけど、人がファンタジーをつくることの成り行きを見た気がしました。

石井:そうだよね。あと10分なんで、プレゼント大会に。全然聞けなかったんですけど。あとでTwitterとかでやりますんで。(Twitter)やってないですけど。

池松:僕は石井裕也ナイトをやるって聞いてすごくテンションが上がったんですけど、皆さんどうなんですかね。

石井:(クジを引きながら)何が当たるんですか? サイン入りポスターですね。おめでとうございます! “夜空”の話しなきゃいけない。

池松:もうちょっと余韻が。。

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石井:どうですか“夜空”は?

池松:なんか、あんまりねー自分がやった作品を表立ってあんまり言えないんですよ。良かったも悪かったも。

石井:つまり池松君がさっき何でこんなに気分を分かってくれるんだって話をしてた気分みたいなところをもろに狙っていった映画で、恋愛映画っていう触れ込みをしてるんですけど、ただの恋愛映画ではないでしょ?

池松:あれを恋愛映画って呼ぶなら恋愛映画でいいんじゃないかなって僕は思ってます。

石井:そうなんだよね。でもなんか今いろいろ問題があるでしょ。シリアだ北朝鮮だいろいろ問題があるなかで、国内でも問題あるけど、でもそれと人を好きになるっていう感情は無関係ではない。っていうことだと思うんだよね。その問題意識を俺なりの問題意識を詰め込んだし、全部、最高密度っていうことなのかなと解釈してますけどね。

池松:例えば、今回の短編を見て思ったんですけど、“夜空”を青いと評価されるかもしれないと今考えてるじゃないですか。製作サイドは。でも青いはなんか違うんじゃないかっていうことをさっき裏でも話してましたけど、まぁ見る前だからあんまり言わない方がいいのかな。

石井:まぁでも全く新しい表現だと思うしね。今日、オールナイトって大変でしょ? 来ていただいた皆さんに言いたいのは、ここまで本音で話すことは以後ないです。

池松:そうですね。石井さんも上にいってさらに。

石井:もう嘘ばっか付くんですよ。

池松:普段ね嘘ばっかついてるんですよ。

石井:でもしょうがないじゃん。本当は本音を言いたいんだけど。

池松:でも本音なんてなくていいと思うんですよ。映画にあれば。

石井:そうなんだよ。これ(映画)でやってるわけだからそれ以上言うことはないっていう。すいませんね、こんなこと言って。あと何分ぐらいですか? 5分!? あのーいちばn最初の出会いの話。俺の好感度上げる感じで話して。

池松:これねー韓国で試したらあんまり好感度上がんなかったんですよ。

石井:そうそうそう(笑)。俺が聞いた時は本当に感動したんだけどな。

池松:いや石井さんだけ違ったんですよ出会ったときの感触が。ざっくり話すと、朝の4時ぐらいに新宿のとある場所でばったり会ったんですよ。朝よくロケバスが停まってるような場所で、いろんな撮影隊が集合するような場所で、全然違う作品だったんですけど、ばったり会ったときに、僕は10代から石井さんのずっとファンで、19歳になったときに『ハラがコレなんで』っていうのを石井さんが撮ったときに、なぜかパンフレットのコメントをくださいと、で、僕がコメントを出したんですね。そのあとにバッタリ新宿で会って、そしたら朝の4時に、僕は眠たくて生意気にフラフラして歩いてるときに、石井さんがパーって来てくれて「コメントありがとうございました」って言われて、当時、本当に名前も無い自分に敬語でありがとうございましたって言ってくれて、朝の4時に頭を下げてくれたんですよ。これが伝わるか分からないけど、ふだんの感触と全然違ったんですね。それまでなんて言うのかな関わった人たちと。あぁ自分は間違ってなかったんだなって思って、いえいえ、こちらこそありがとうございましたって言ってそのあとにWOWOWで出会ったんですよ(『エンドロール ~伝説の父~』)。

石井:印象的だったよね。明け方まだ未明っていうんですか。

池松:暗かったですよね。

石井:頭下げ合ってね。そういうところから始まってるっていうことですよ。こういう話はほかではしないので。

池松:そうですね。しようとも思わないですよね。

石井:俺の頭の下げ方すごかったでしょ。

池松:すごかったですよ。

石井:年上だけど。じゃもう1個だけ、最後。この前、池松君が死ぬ夢を見たんだよね。

池松:これがまたすごいんですよ。ハッとしましたよ。

石井:起きてすぐに池松君にメールして「池松君が死ぬ夢を見たよ」って。そしたら「まだ死にたくないんです。やり残したことがありますから」って返ってきたの。俺、問い詰めなかったけどやり残したことってなんですか?

池松:ちなみにそのときに石井さんは、「俺はやり残したことはない。生きてるからもうちょっと頑張りたいと思ってる」って連絡が来て、うわー全然対極だなと思って。

石井:でもあんまり、そんなことはあえて2人のなかでは議論したりしないでしょ。だからあえて聞いてみようと思って。やり残したこと言って。

池松:やり残したことねー割とありますよ。

石井:1個言って。

池松:だから、石井さんのメダカを引き取らなきゃいけないとか、1個言いましたよね。

石井:聞いた。

池松:もう1個言いますか。

石井:うん言って。あと2分くらいあるから。

池松:なんでしょうね。子孫を残してない。以上です。

石井:やっぱ仕事じゃないんだね。

池松:そうですね。

石井:それでいいと思うけど。

池松:人が生きることはねー。

石井:それは池松君の勝手だし、やりたいようにやったらいいよ。

池松:はい。

石井:もうそれぐらいの才能を持ってるわけだから。

池松:それ以上言わないですけどね、まぁなんかねーっていうところで終わっておきます。こんなんで良かったんですかね。

石井:いやいや88点ぐらい取れたかな。ね?
(拍手)
池松:本当ですか。

石井:この次の上映はじゃあ『舟を編む』ですか? これ見られたらすごいですよ。壮絶な映画体験。池松君は初日に見に来てくれて。

池松:石井さんの映画を劇場で初めて見たのが『あぜ道のダンディ』っていうこれはもうすっごい傑作なんですけど、僕はここ(テアトル新宿)で立ち見で見たんですよ。そんな思い出の場所で石井裕也ナイトを開催されると聞いて嬉しくて嬉しくてなんか、言い過ぎない方がいいのは分かってるけど、やっぱすごい人ですよ。本当にすごい人ですよ。まぁこれはもう今後さらにさらに証明してくれると思いますけど、僕もちゃんとこれを言ったからにはちゃんと、あの池松が言ったんだってことをちゃんと証明していこうと思ってます。

石井:すごいいいことを聞きましたね。短編集で引いちゃった人は、『舟を編む』を見て帰っていただいて。本当に、本当にありがとうございました。

2017年5月7日 テアトル新宿

『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』
2017年5月13日公開
監督・脚本:石井裕也(『舟を編む』)
原作:最果タヒ(リトルモア刊「夜空はいつでも最高密度の青色だ」)
出演:石橋静河 池松壮亮 佐藤玲 三浦貴大 ポール・マグサリン 市川実日子 松田龍平 田中哲司
エンディング曲:The Mirraz「NEW WORLD」
製作:テレビ東京、東京テアトル、ポニーキャニオン、朝日新聞社、リトルモア 配給:東京テアトル、リトルモア
©2017「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」製作委員会
公式HP: http://www.yozora-movie.com/

『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』応援企画
「石井裕也監督作品オールナイト」

『ぼくたちの家族』
原作:早見和真 脚本:石井裕也
出演:妻夫木聡 池松壮亮 原田美枝子 長塚京三
製作:2014年 上映時間:117分
配給:ファントム・フィルム 

『舟を編む』
原作:三浦しをん 脚本:渡辺謙作
出演:松田龍平、宮崎あおい、オダギリジョー
製作:2013年 上映時間:133分
配給:松竹、アスミック・エース

『吠える』
男が叫び、罵倒し、吠えまくる。以上。制作当時、石井監督が強い親近感を抱いていたという罵倒や怒声だけで作られた作品。
製作:2007年 上映時間:2分

『幸子の不細工な天使たち』 ※英語字幕入り
10歳の少女・幸子は悩んでいた。昔はイケメンでかわいい天使がいっぱい見えたのに、最近は何故か不細工な天使しか見えなくなっていたのだ。
製作:2010年 上映時間:10分

『夢!イケメン大変身!』 ※英語字幕入り
好きな女の子に告白できない不細工な男が、弟と協力してイケメンに変身する。『川の底から〜』撮影終了直後に、クールダウンとして制作。
製作:2009年 上映時間:15分

『198X年の歌』 ※英語字幕入り
女が恋人の部屋を訪れると、男は豹変していた…。時代に対する不満と怒りをストレートに吐き出しつつ、自分達の世代がどういうものかを問いかける。
製作:2009年 上映時間:12分

『東京の空の雲はナタデココ』
社会から取り残されてしまったカップルが、「自由」のために歌って踊りまくる反体制的ナンセンス・ロック・ミュージカル。「ええじゃないか騒動」の現代版。
製作:2006年 上映時間:20分

『ゴ』
ハリウッド版『ドラゴンボール』の出来に不満を抱いた役者の卵たちが、著作権ギリギリの範囲で『ドラゴンボール』を映画化しようとする物語。
製作:2009年 上映時間:5分

『グレートブリテン』
10分/DV/2007年
危篤の父親を見捨てて彼女とアオ姦に出かける少年。だが父親は死の床で、「いつか息子とグレートブリテンに行きたい」という夢を捨てきれない。
製作:2007年 上映時間:10分