【全起こし】ダルデンヌ兄弟が自分流の映画作りを丁寧に語る「映画というのは事故みたいなもの」

Q:この作品を作るに当たって苦労した点を教えてください。

L:難しいところはあまりなくて、すべて難しいですし、またすべてはそれなりに進みました。私たちは撮影する前に俳優さんたちとたくさんリハーサルをして長い間準備をするんですけど、そこでいろんな問題を解決していて、あえて言うならば、セットで彼女が寝る部屋がとても狭い部屋を作りましたので、そのセットを作るのが大変だったかな。

MC:意外な回答でした。ではもうひと方お願いします。

Q:とてもいい映画を見せていただいたという気持ちで、上質な映画だなという感じがしてありがとうございました。一番最後のシーンで主人公のジェニー先生が(死んだ女性の)お姉さんに“抱きしめてもいいですか?”って言って、抱きしめていましたけれども、それまで彼女(ジェニー)と誰かがスキンシップを取る場面が全然なくて、ベルギーのスキンシップの文化は私にはわからないんですけれども、ひとりの女性の孤独みたいなものが全編にわたって感じたなって思うんですけど、そこには監督のどんな気持ちが込められているのかなって聞きたいと思いました。

JP:そうですね、孤独な人ですね。抱きしめたときに確かに彼女の孤独は感じるわけですけど、だから彼女がお姉さんを抱きしめたわけではないと思います。ひとつはお姉さんのおかげで探していた名前が分かったことで幸せに感じたということがあると思います。やっと使命を果たしたと感じて。そして、お姉さんが最後まで自分の気持ちを語ってくれたということに対しても、認めているということでもあります。最初のころは、妹に売春させてどこが悪いんだということを言っていましたが、最後は、私は実は嫉妬を感じていていなくなってホッとしていたと言うわけですので、そこまで言ってくれたことに対して彼女はすごく認めていると。

そして、その場面でお姉さんが妹に嫉妬していたことを言ったそのシーンは、私たち監督としては、外国人をもっと人間として見てほしいということでもあったんですよね。例えば、移民だからとても可哀想でいい人だとか、すごく嫌な悪い人と思うのではなく、私たちと同じ人間で、いろんな感情を持つことができて、そのなかで嫉妬という感情が持てるんだという。だから、ただその人たちを怖がるとか、ただ可哀想だから助けてあげるとかそういうような対象として見るのではないということですね。

MC:お時間となりました。以上で本日のティーチインを終了とさせていただきます。

JP&L:アリガトウ!

2017年2月23日 角川映画試写室

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「ポスター見えてる?」と自らポスターの向きを変えてくれる2人は、彼らの映画のように優しかった。

『午後8時の訪問者』
2017年4月8日公開
監督:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ 出演:オリヴィエ・ボノー ジェレミー・レニエ ルカ・ミネラ オリヴィエ・グルメ