【全起こし】ダルデンヌ兄弟が自分流の映画作りを丁寧に語る「映画というのは事故みたいなもの」

Q:ダルデンヌ兄弟の監督作品は音楽が使われるのは稀かと思いますが、それはどんな理由でしょうか。

JP:音楽を入れる場所がないんです。ではなぜ音楽を入れる場所がないのか? 不十分な答えではあると思うんですが、自分たちなりい解釈してみました。ほかの作品もそうですが長回しで撮っていてワンシーン、ワンショットになっています。長回しで撮るということはある特定の時間を切り取っているようなものなんですね。その特定の時間のなかにはすでに動きがあり、言葉があり、沈黙があり、そして音があり、外の音とかが聞こえてくる、ときにはラジオから音楽が聞こえてきたりする。最初の長回しの場面と次のシーンの間には時間が少し途切れていてそこを飛び越しているわけです。

ですから映画自体がちょっと事故みたいな感じで、たまたまこっちの時間を切り取って、たまたまこっちの時間も切り取られて、それがたまたま繋がったという感じでできているんです。音楽を入れてテストもしたんですけど、そうすると音楽が映画を包み込んでしまって、その包みがあるがために見ている人と中で起こっていることに距離ができてしまうと思ったんです。私たちにとっては大切な生々しい感じっていうのが音楽を入れるとなくなってしまうんですね。見ている人に感じてもらえないなと思って音楽を入れていないんです。意地悪な人は“あなたたちは音楽感覚が悪いから全然音楽が想像できないんでしょ”と言われますが、そうかもしれませんね(笑)。

MC:ありがとうございます。ちなみに今回1曲だけ入っていて「バイバイ ジェニー先生」という曲が。作詞はジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌです。

JP:今の質問は映画音楽としてどうして流さないかという質問だったと思いますので、私の先ほどの答えになるわけです。ほかの作品でも音楽を使っている場合は、シーンの中から実際に音楽として聞こえてきているんです。僕たちに「バイバイ ジェニー先生」を歌いなさいということでしょうか(笑)。

MC:歌いますか?

JP:ちょっと皆さんが耳を閉じたくなるようなことになるかもしれないのでやめておきます(笑)。

MC:大変残念なんですが、次で最後の質問になります。(2人の女性が挙手)

JP:あちらの女性の方は随分前から挙げているからどちらの方の質問も答えますよ! ジェントルマンなんでね(笑)。

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