【全起こし】杉野希妃×青木崇高「映画の監督とラブシーンはなかなかない体験でした💚」

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第29回東京国際映画祭のコンペティション部門出品作『雪女』の試写会と記者会見が、2月23日(木)、公益社団法人日本外国特派員協会にて行われ、監督兼主演の杉野希妃と、俳優の青木崇高が登壇。試写を観た外国人記者たちからの質問に答えた。今回はその模様を全文でお届けする。

↓試写会前に挨拶で登壇した杉野希妃(左)、青木崇高(右)
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MC:なぜパトリック・ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の原作を今、映画化されたのですか?

杉野:4年前に小泉八雲の原作を読む機会がありまして、読んだ時に思ったのが小泉八雲が伝えたかったこと。彼はギリシャ出身で、アイルランドに住んでいたり、アメリカでジャーナリストとして生活していたりする中で、日本にたどり着きます。小泉八雲と名前を変えて日本人として、ギリシャ人としても生きるわけですけど、彼が海外から来た人間として、日本の良さや日本の心を日本人に対して、海外の方に対しても伝えようとしたことが、今の時代に求められていると感じたんです。彼が描いた「見えないものと共存している私たち」という視点も、やはり失われつつあると思いましたし、ヨーロッパでも移民の問題がたくさんあると思うんですけど、今アメリカでもどんどん思想が過激になっていく中で、自分と違う人と交わっていくのは、未来を作っていくことだと思うんですね。そういうお話を、小泉八雲の「怪談」だったり、特に「雪女」は描いていると思いましたので、現代で映画化する意味があると思いました。
記者:監督は大映映画に色濃く影響を受けていると言っていましたが?
杉野:私は本当に大映映画が大好きで、溝口健二監督も増村保造監督とか。この映画に関しては吉村公三郎監督の影響や、小津安二郎監督の『浮草』に影響を受けたことがきっかけで、私自身が映画監督を目指したというか、映画の世界で生きていきたいなと思ったので、どうしてもそういう監督の作品の匂いになるというか。特に、渡し舟のシーンは、「あっちの世界からこっちのシーンにやってくる」という「狭間の世界」を描くという意味で、象徴的に川のシーンを出しています。あんまり具体的な作品名は上げない方がいいかもしれないですけど(笑)。溝口健二作品のある作品にすごくインスパイアを受けているところもありますし、色という意味では小津安二郎さんの『浮草』のカラーの使い方も好きだったので、すごく参考にさせていただきました。小泉八雲の原作を読んだ時の感覚を大事にしたいと思い、読んだ時に昔の日本映画の映像が私の中で想起されました。人によってはもっと大胆に、現代的にアレンジするべきだったんじゃないかと言われるかもしれませんが、私としてはクラシックな良さと、モダンの面白さみたいなものを掛け合わせて作ったのが本作になります。
記者:「雪女」と言えばやはり小林正樹監督だと思います。いろんな賞も受賞されて、好評を得ている作品ですが、これを参考にされていたり、インスパイアされたりというのはありますか?
杉野:皆さんご存知の通り、小林正樹監督の『怪談』(’65年)は大傑作だと言われていて、私はその中でも特に「雪女」が大好きで、あんな短編に原作の世界観をそのまま莫大な予算を使って体現されたのが小林正樹の「雪女」で。私の大好きな映画なんですが、そことは違うアプローチをしたかったというのがありました。原作通りに映画化するということは全く考えていなかったですし、もちろんあれだけの予算もなかったので、どうやったら私なりの視点で、私なりの新しい視点でこの作品を描けるのかなと考えた時に、やはり子供の存在、雪女と人間の子供というものはどういう存在なのか、どう生きていくのかということに焦点を当てるのが私のやりたいことでした。ですので、小林監督の作品にはもちろん太刀打ちできなかったかもしれないですけど、私は作る前から全く別の作品を作るという気持ちでこの作品を作ったつもりです。

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青木:あの……そろそろ僕もしゃべりたいんですけど……。(会場笑い)
MC:(笑)それでは青木さんに質問です。杉野さんと組んで、例えば女性監督ならではの視点を感じる部分はありましたか?
青木:皆さん御覧頂いてありがとうございます。監督から最初にオファーをいただいた時は、女優として監督してプロデユーサーとしてマルチに活躍されている非常に才能豊かな方だと存じ上げていましたので、前から一緒に仕事がしたいと思っていました。こうしてこの場でご一緒できることは大変嬉しく思います。一俳優である以上、刺激が常に欲しい生き物でありまして、それは男性の監督ももちろん刺激はありますけど、女性であるとか僕より年下の監督でありますけど、全てを自分でその状況に預けて、雪女の世界を生きるということを心から楽しむことに、女性の監督であるとかは僕には関係なかったです。あと、映画の中で監督とラブシーン※1があったというのが(笑)、なかなかない体験かなと思いました💚(笑)。※1 濃厚です
杉野:(激しく照れ笑い)(会場笑い)

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記者:劇中に「結局夫婦であっても男と女は永遠に分かり合えないものなのよね」というセリフがありますが、これは日本的な考え方なのですか? それともこの作品特有の言い回しなのですか?
杉野:私自身が普段考えていることをセリフの中に入れたという感じなんですけども、2008年ぐらいから私はプロデューサーとしてマレーシアの監督だったり韓国の監督、いろんな国の監督とご一緒にお仕事をさせていただく中で、分かり合えないということがすごくストレスだったんですけども、人間みんな異なって当然ですし、分かり合えないっていうのは当たり前なんだ。でもその当たり前の中でどうやってお互いがお互いを尊重していくのかがすごく大事な姿勢というか、態度であるなと感じたわけです。それが夫婦であっても同じで、分かり合えないっていうことが大前提の上でお互いがお互いの全てを知らなくても、言葉で説明できなくても、共有できるものはあるという思想というか、気持ちというのはすごく大事なんじゃないかなと思います。そんな気持ちで私は日々映画を作っています。
青木:あれはネガティブなことではなくて、「お互い支え合って夫婦生活ってやっていくんだよ」というメッセージだと思います。あのシーンで言いますと、お母さんからの応援の意味で「クヨクヨするな、頑張って。大丈夫、大丈夫。自分を信じてやりなさい」っていう意味だったと思います。

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記者:映画を作る上で、どうやって大勢の人を巻き込んで、ひとつの方向に向かわせて完成させるのか、映画作りについて教えてください。
青木:それは彼女の人柄ですね。純朴、そして彼女のパワーだと思います。
杉野:(笑)。公の場なのでそうおっしゃってくださったと思うんですけども(笑)。私自身も青木さんは本当に大好きな俳優さんで、映画化をしようと思った段階から青木さんには巳之吉役を絶対にやっていただきたいなとずっと思っていて。
青木:ありがとうございます(笑)。
杉野:(笑)。まだ脚本が完成する前にお話をしていたと思いますし。自分がご一緒したかった方と一緒にできることがすごく夢みたいだし、ありがたいなと思います。本当にありがとうございます。
青木:いやいや、本当にこちらこそありがとうございます(笑)。
(壇上で頭を下げ合う2人に記者和む)
杉野:(笑)、情熱だけは人一倍あると思ってまして。なんとかして自分が、例えば自分が仕事をしたい方、巻き込みたい方を、なんとか一緒にしたいという思いを伝えることに関しては人よりはちょっと長けているのかなと。伝える技術はないんですけど、溢れる思いをそのままストレートに、不器用なんですけどそのまま真っすぐ伝えることはやってきたかなと思います。
青木:あと付け足していいですかね。それだけじゃなくて、彼女はまさに雪女でして……。
杉野:(笑)。
青木:というのも、去年撮影していたんですけど、結構暖冬で雪がなかなか降らない時期があったんです。でも、監督が現れるとその日だけチラホラ雪が降ってきて…!? そういうことが何度も何度もあって。これはもうスタッフもキャストも、みんな監督のことを雪女と認めざるをえない状況だったんで、この作品はいいものになると信じてみんなも付いて行くっていう形だったと思います(笑)。

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記者:作品の時代設定はどうなっているのですか?
杉野:現代のパラレルワールドとして描いているので、特に時代があるわけではありませんが、美術だったり衣装だったりは大正、昭和初期あたりを参考にしながら作ってきました。私の意図は、「雪女」の物語自体が千年前にあった話なのか、一万年前にあった話なのか、はたまた100年前なのか現代なのか? たぶん物語にある本質自体がいつの時代にあってもおかしくない物語ですし、雪女の存在そのものがサイエンス・フィクションであると思ったので時代を超えていくような物語にしたいなと思ったんですね。ですから、一番はじめの白黒のシーンが終わった後でマタギの格好をした巳之吉と、スーツ姿の源太が渡し船に乗って現れるところで観ている皆さんを幻惑させたかったというか。
記者:劇中の成人の儀式の歌は、古典から引用しているのですか? それともオリジナルですか?
杉野:あの歌は完全にオリジナルです。子供から大人になる過程において川を渡って行く。渡し船のところでも川を象徴的に使ったんですけど、成人の儀式の時も、狭間の世界として川のシーンを出しています。歌詞も脚本家の3人で練りながら考えたものでして、共演した佐野史郎さんが小泉八雲の朗読ライブを10年以上続けられていて、小泉八雲研究家といっても過言ではないくらい詳しい方なんですけど、佐野さんにも現場で「歌詞をもっと変えた方が良いんじゃないか?『やよい』っていう意味はこう捉えられるから、こういう風に変えた方がいいじゃないか?『シロ』って使わない方がいいじゃないか?『ハジ』っていう言葉は主観的すぎるから、もっと違う言い方をした方がいいんじゃないか?」っていうアドバイスやご意見をいただいて、撮影中に歌詞もちょっとずつ変えていった経緯があります。青木さんもそうなんですけど、皆さんいろんな意見を言ってくださったりして、役者さんと一緒に作業できたのですごく幸せな作品になったと思っております。
青木:雪女に見つめられて「殺しますよ」って言われたら頑張りますよ(笑)。
杉野:そんなことは言っておりません……(笑)。


『雪女』
2017年3月4日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、横浜シネマジャック&ベティほか全国公開
監督:杉野希妃 出演:杉野希妃 青木崇高 山口まゆ 佐野史郎 水野久美 宮崎美子 山本剛史 松岡広大 梅野渚
配給:和エンタテインメント
(c)Snow Woman Film Partners