【全起こし】ティム・バートン監督「日本で撮影したかったけど予算がなく断念」

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ティム・バートン監督が秘密のファンタジーワールドを舞台に描く奇妙な物語『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』が2017年2月3日に全国公開される。本作の記者会見が、1月31日に六本木グランドハイアット東京で行われ、2年ぶりに来日したティム・バートン監督による記者会見が行われた。(※少しだけネタバレがあるので、読み進めるのは自己判断でお願いします)

MC: それでは、ティム・バートン監督さんにご挨拶していただきましょう。監督、お願いできますか。
バートン: 本日はお集まりいただきまして、ありがとうございます。今回、この特別な映画を久しぶりに日本という特別な場所に持ってこられてとても嬉しく思います。
MC: ありがとうございます。それでは監督に質問がある方、順番にお願いします。
記者: この映画には原作があって、いろいろなキャラクターが出てきますが、文字で書かれたキャラクターを視覚化する上で苦労されたことはありますか?
バートン: 原作がありながらの映画化ということで幾つかの変更を加えています。例えばキャラクター設定を多少加えました。エマという女の子なんですけど、火を扱うという能力をちょっと変えて宙に浮くことができるようにしています。私のイメージとして宙に浮いている女の子というのがとても詩的なものではないかと思って、そうしました。とはいえ、変更を加えながらも原作のスピリットが込められるように心がけました。
記者: 沈没船が浮上するシーンがとても美しく感じました。エマに空気を操る能力を持たせて物語が大きく展開しますが、これは監督のアイデアですか?
バートン: 幸いにも原作者のランサム・リグズが我々を支援してくれまして、本を読むという体験と映画を観るという体験では異なるものなので、本の持っている謎めいている部分や詩的な部分、またその美しさというところを考えながら協力していただいて手がけていきました。船の場面というのは、原作にも登場する場面なんですね。もともと著者の方が古い写真から着想してこの物語を作りあげていったのですけども、静止画で捉えられているものから伝えるということと、映像で物語を伝えるというところは違いがあるので、私としては原作の持っている詩のような美しが損なわれないように務めました。

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記者: 映画の中でミス・ペリグリンは時間を巻き戻していましたが、監督自身が時間を巻き戻すとしたらいつ頃に戻りたいですか?
バートン: 私はとても時間の管理が苦手で、今日が何日かもわからないんです。私をよく知っている人は、私がこの作品を作ったということがとても愉快だと思っている方がいるくらい、時間の管理が本当に苦手です。そういう私が今回時間というものを扱うということで、それを探求するのがとても楽しい経験でした。私自身が時を戻すとか、未来に行くことよりも今現在を生きることで精一杯(笑)。一日一日を最善に過ごすことができればと思っております。
記者: これまでのタイムリープやタイムトラベルをテーマにした作品はたくさんありましたが、このような作品を監督はどう分析されていますか?
バートン: こういうテーマの作品がたくさんあることは認識しているんですけど、私はあまり技術的なことは考えないので、すべて感情面から作品を見ています。
記者: 奇妙で可愛らしい子どもたちがたくさん登場しますが、撮影の際に子どもたちを演出していて苦労した点はなかったでしょうか?彼らをすごいと思った瞬間はありましたか?
バートン: 子どもたちの中には全く演技をしたことのない子もいましたので、セットや実際にある家など、実物を使いました。あまり過度にCGなどに頼らないような形で、子どもたちに演技をしてもらいました。そうすることで子どもたちに経験して、感じてもらうという状況で演技をしてもらいたかった。子どもたちは自らスタントをやりたいと言ってました。彼らにとってみればアクションヒーローになったような気分だったかもしれません。子供たちは私の子供同様、あんまり言うことを聞いてくれませんでした(笑)。
記者: イギリスをはじめ、ベルギーやフロリダなど作品にあう素晴らしいロケ地で撮影されたようですが、ロケ地での撮影で苦労した点やこだわった点はありましたか?
バートン: 今回は、またフロリダで撮影することができました。『シザーハンズ』を撮影した場所の近くだったのですが、木々が非常に高くなっていたり全く様子が変わっていて衝撃でした。ロケ地に関しましては、私はカリフォルニアのバーバンクで育ったのですが、ロケ地もそこに似たような郊外の空虚な住宅街がありました。ベルギーでは素晴らしい家を見つけまして、本物の家を使うのがとても大切で、子供たちのためだけではなく、役者にとってもスタッフにとっても本物の場所、ロケ地があるということでインスピレーションが得られる大切なものでした。

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記者: 今この作品を作ろうと思った最大の理由は、ありのままの自分を受け入れるというポジティブなメッセージに通じるものがあるのでしょうか?
バートン: 今作で語っている内容が、自分自身が経験して感じたことでもあります。よく周りから「この人ちょっと変わっている」と思われるような人は、とても芸術性に富んでいたり、静かな人であったりするんですけど、彼らは皆”いい人たち”だと思うんです。本作でも言っている通り、ちょっと他の人とは違うと思われていても、それでいいんだと。中身は普通の子供である、普通の人であるということがとても大切であると思います。
記者: 主演のエヴァ・グリーンさんとの仕事はいかがでしたか? また彼女は今後、監督にとって第二のジョニー・デップ的な存在になるのでしょうか?
バートン: ジョニーと比べると男女の違いもあるし、まあ、今はごちゃごちゃになる時代ですけど(笑)。エヴァは無声映画に出てくるような女優さんの雰囲気を持っている方で、言葉を語らずしても、何かを伝えることができる人です。ジョニーとはまた違うんですけど、似たようにいろいろなものを演じることができる方です。面白さであたり、感情的な部分であったり、ドラマチックな要素、謎めいた部分も出せる役者さんです。今の時代にこのような資質を持っている方は稀だと思います。
記者: 映画の最後の方に日本の一万円札が出てきますが、これにはどういった意味があるのでしょうか?
バートン: 最後の部分は私が書きまして、何故かと言うと日本に来て撮影がしたいと思っていたんですが、残念ながら予算が足りなくて結局はアメリカで撮ることになってしまいました(笑)。気がついていただいてありがとうございます。
記者: 監督の映画に出てくる衣装や小物は、いつも可愛いのですが、これは監督の想像したものを美術さんに頼むのでしょうか?
バートン: 私はアニメーションをやっていたのもありまして、見た目であったり衣装、メイクに関しましても、すべてキャラクターの一部であって大切なんですね。場合によっては自分で絵を書いて「こういうことをやりたい、こういうものが欲しい」と言う場合もあります。と言いながらも見た目だけが重要だというわけではなく、感覚をちゃんと投影する、それを伝える、気持ちを伝えるということをしなくてはいけないので、セットであり小道具であり、衣装は私にとって非常に重要なものです。
MC: 双子ちゃんのビジュアルがすごく怖かったですけども。
バートン: はい。双子というのはいつも可愛いと同時に怖いと思います(笑)。

↓イベントの最後には、女優の松井愛莉と、双子のりんかちゃん、あんなちゃんが登場
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↓「『ミス・ぺレグリンと奇妙なこどもたち』の日本版を撮影したい」とティム・バートン監督。
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『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』は2017年2月3日に全国公開!

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