【全起こし】※ネタバレ注意!!『哭声/コクソン』ナ・ホンジン監督来日! 6年かけてすべてを注ぎ込んだ作品 

『チェイサー』『哀しき獣』など韓国映画界の新たな才能として活躍するナ・ホンジン監督が新作の『哭声/コクソン』を引っ提げて来日! プレミア上映会に本作に出演する國村隼と共に登壇し、ティーチインを行なった。これまで観たことがない、既存のジャンルには分類できない本作を見終わって呆然とする観客から拍手で迎えられた2人が、質問に答えながら撮影の裏側を語った。以下はその全文。
(映画のネタバレに繋がる発言があります。まったく情報を入れずに観たい方は、鑑賞後にどうぞ。ここで読むのをやめた方、鑑賞後に絶対読みたくなるはずですので、そのときまでお待ちしております)

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MC:本日は、映画『哭声/コクソン』のプレミア上映会にお越しいただきましてありがとうございます。今日、本当に日本最速の上映ということで皆さんにご覧いただいた後でですね、拍手が聞こえておりました。ゲストのお二方にもその拍手届いていたのでここであえて聞くことはしませんが、できるだけ今日は長く、Q&Aの時間を取らせていただこうと思いますので、皆さん今から質問を考えていてください。

ナ・ホンジン監督、5年ぶりの来日となります、國村隼さんもいらっしゃっています。さっそくお呼びしたいと思います。『哭声/コクソン』から國村隼さん、ナ・ホンジン監督です! どうぞ拍手でお迎えください。ではまずお2人にご挨拶を頂戴したいと思います。まず國村さんからお願いします。

國村:どうも、こんばんは。今日は本当にありがとうございます。映画をご覧になった後のお客さんの前に出てくるのって、本当にドキドキします(笑)。(拍手を聞いて)ちょっとホッとしました。皆さんがこの日本で一番最初にこの『哭声/コクソン』をご覧になってくださった人たちです。本当にもう嬉しくて嬉しくて、皆さん一人ひとりに拍手したいような気がします。今日は本当にありがとうございます。

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監督:こんばんは、ナ・ホンジンです。お会いできて嬉しいです。ここまで足を運んでいただき、ありがとうございます。映画の上映時間は結構長かったと思うんですが(156分)、この時間まで皆さんお待ちいただいてありがとうございます。トイレとかは大丈夫でしょうか? この映画はシナリオから6年くらいかけてつくった映画なんですが、やっと皆さんにお見せできるこの時を迎えられて本当に嬉しいです。このあとのQ&Aの時間も、ベストを尽くして挑みますのでよろしくお願いします。

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MC:ありがとうございます。今日は立ち見のお客さまもいらっしゃいますね。では、さっそくQ&Aにいきましょうか。トップバッターをきってくださる方、いかがでしょうか。

Q:素晴らしい映画をありがとうございました。すでにリドリー・スコット監督の製作会社からリメイクのオファーが入ったということで、韓国サイドの代表の方が、「この題材を撮れるのはナ・ホンジン監督以外いない」ということを明言されたそうなんですが、もしナ・ホンジン監督にハリウッドのリメイクのオファーがきたら、もう一度本作を撮ろうと思われますか? その際、國村隼さんは起用されますでしょうか。また、國村隼さんはハリウッドのリメイクのオファーがもし入ったらどうされますか?

監督:スコット・フリー(リドリー・スコットらが立ち上げた映画製作プロダクション)から連絡があったということは聞きました。たぶん代表の方は、演出できるのはナ・ホンジンしかいないと冗談で言ったと思います。でももし自分に依頼が来たとしても、リメイク版を演出するつもりはありません。でも國村さんはこの映画にとってかなり重要な方で必ず必要になると思うので、オススメしたいと思います。

國村:あのオススメされてもナ・ホンジンがメガホンをとらないのであれば、私もやることはたぶんないんじゃないかなと思います(笑)。

監督:では、両方ともしないことに。

MC:ここでやんわりお断りが入ったということで(笑)。続いて質問のある方、どうぞ。

Q:これまでのナ・ホンジン監督の『チェイサー』や『哀しき獣』といったどちらかというと社会派サスペンスみたいな作品と、今作は違ってオカルトというか、、ちょっと表現しにくいんですけど、元々監督はどちらがつくりたいものだったんでしょうか。

監督:この『哭声/コクソン』という映画は、前の2作品をやった後に、もう少し自分らしく自由にやりたいようにつくりたいという意欲が高ぶったときにつくった作品なので、自分のスタイルのままつくった、自分がやりたいことにより近い作品だと思います。

MC:ありがとうございます。ほかにご質問ある方。

Q:今回、ナ・ホンジン監督が國村さんを起用された一番の理由というのはなんだったんでしょうか。日本でも非常にベテランの俳優さんで悪役も含めいろんな役をやられていますが、決め手になったのはどこだったんでしょうか。それと國村さんは、ナ・ホンジン監督の現場で一番印象的だったところはどこでしょうか。

監督:シナリオができあがったときに、日本人の俳優が必要だということになりまして、國村さんと同じくらいの年齢の俳優さんをたくさん調べました。もうすでに國村さんの存在は存じ上げておりまして、ずっと尊敬していた俳優さんではあるんですが、この機会に出演作品をたくさん見ているうちに、特徴を見つけまして、カットごとに自分の演技だけで編集されつくしているような演技をされているのが、とても印象的でした。カットの中で自由に演技をしているところがとても素晴らしいと思ったんです。この『哭声/コクソン』の中で“よそ者”という役は、お客さんに「この人物はどういう存在なのか?」という疑問を投げかけるとても重要な存在になるんですね。その役をやり遂げることができるのは、國村さんしかいないと確信を持って、日本に来てオファーをさせていただきました。

國村:私は、最初にオファーいただいたときに彼の前作『チェイサー』と『哀しき獣』を観て、そしてもちろん本作の脚本を読ませていただいて、もうその段階でこのナ・ホンジンという人は、とんでもない才能だなと実感しながら。で、いざ現場に入り一緒に撮影という作業をしていく中で、その最初に思っていた以上に、この人は本当に才能の塊がそのまま人の形をしているような人だな、っていうのが現場であるテイクを撮っていて、この人は、なかなか終わらないです。というのもひとつテイクを撮って、そのテイクから今度は次にその基本ビジョンにプラスした新たなイメージが、たぶんドンドンと出てくるタイプの方で、どんどん自分のその膨らんでいくイメージをもっともっともっとと。現場ではテイクを重ねるということが本当に多かったです。ただ、むやみやたらに重ねるんではなく、そうやって自分の中のイメージの広がり、そこがまずすごい才能だと思うんですけど、それを現場で目の当たりにして、やっぱりスゴイ! 想像以上だと思いました。

MC:続いてお願いします。

Q:昨年ソウルで『哭声/コクソン』を観させていただいて、朝一で観たんですけれども、その日1日、ちょっとブルーな気持ちに、、なってしまって(笑)1日を過ごしたんですけれども、今回ちょっと方言が難しくて、(そのときは)あまり理解が出来ていなかったんですけれど、今日観て、さらにまたブルーになりました。私はファン・ジョンミンさんのファンなんですけれども、現場でのエピソードがありましたら教えてください。

國村:ファンさんとは、画面の上ではやりやったりしていますが、撮影現場で一緒に過ごしたのはそんなに回数ないんですね。でもその短い中で、、韓国の役者さんって彼に限らずですが、映画という世界に行くまでにものすごくいろんなスキルを重ねてらっしゃる。で、彼もそれにもれず、学生時代に演劇というものを始め、それから舞台という世界に入り、で映像の世界に行くまでにいろんな経験を重ねて、だから当然のごとく経済的にもとっても苦労したんだという話を聞いて、あぁなんか日本の役者の事情なんかとよく似ているなと、面白いなどこでも一緒なのかと思って。ファンということでご存知だと思いますが、韓国で大スターですよね、彼は。でも全然おごるところのない、本当にいろんなキャラクターをやられますけれど、今回のキャラクターもそうですけど、特にファンさん自身の物事に対する真摯な人柄みたいなものが、チョッチョッと出てくる。だからそのまんまの人です、あの方は。

Q:あと監督に、(今作に限らず)キャスティングする基準が何かあればお伺いしたいです。
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監督:一番その役にふさわしい役者を選びます。各俳優さんたちのバランスも重視するところです。それくらいが自分の原則と言えるところです。先ほどの(國村とファン・ジョンミンとの)エピソードについて補足を入れますと、國村さんとファン・ジョンミンさんが、映画の中で会うシーンはほとんどないですね。ないと言っても過言ではないんですけど、元々1シーンだけ2人が会うシーンがあったんですけど、それすらも自分が編集の過程でカットしたので映画の中では、2人が会うシーンはなかったと思います。

MC:ありがとうございます。他にいらっしゃいますか?

Q:以前の作品でキム・ユンソクさんが、看板の上から飛び込みをさせられて、それがあんまりちゃんと映っていなかったというようなことをおっしゃっていたんですが、監督は國村さんを“ソンセンニム(先生)”とお呼びになっているくらい尊敬されているようなんですが、目上の方に結構無理なことをお願いするのは大変じゃなかったのかなって思いました。韓国ではやっぱり年上の方には敬意を表されているので、裸にしちゃったりとか、結構いろんなことをされているので(笑)。國村さんも、そういう大変なシーンについてどのように思われているか伺えればと思います。

監督:本当に申し訳なかったと思っております。ただシナリオがそういうふうに出来ていたので、それは自分としてはどうしようもなかったところだと思います。大変な思いをされるシーンが多かったことについては、撮影以外のところで何とかケアをするために最善を尽くしたつもりであります。自分なりに頑張りました。今までも申し訳なかったと思いつつというのはあります。もしこの映画が日本でいい成績が残せなかったら、自分に何て言うかっていうのはちょっと心配なんですけど、是非いい結果を残すことを祈っております。撮影を通してたくさんのことを國村さんから学んで、驚き、感嘆するところが多かったです。また、撮影の過程を通してさらに尊敬し大好きになりました。謝罪と感謝の気持ちをこの場でまた述べさせていただきたいと思います。(日本語で)スミマセン!

國村:何か気恥ずかしいですね(笑)。私も、まさに監督が今言ったように、台本の中でこういうことをしなければいけないということは、あらかじめ分かっていたので、それを分かっていながらオファーを受けるということですから、ただしおっしゃる通り、一番引っ掛かったのは、「あれ? 俺ひょっとしてキャメラの前ですっぽんぽんになってできるのかな?」って(笑)。でもこの作品の世界観はすごいなと。ここでこの男の役を僕以外の人がやってるのは、見たくないなっていうのが正直なところで、それがひょっとしたら観客の皆さんのご迷惑になるようなものをさらしても、それでもやってみようと思ったのは、そういうことがあって。ですから、あんまり監督にひどいことをさせられているということは全くなくって、あくまで自覚的に、この世界に自分から飛び込んだということです。

Q:ひと言、付け加えさせていただいてよろしいでしょうか。韓国で賞も取られまして(國村は『哭声/コクソン』で韓国の2大映画祭青龍賞で、外国人としては初めて助演男優賞を受賞)、TVで拝見していましてすごく嬉しかったです。これからもご活躍をお祈りしております。

國村:ありがとうございます。

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(観客と監督から改めて拍手が贈られた)

MC:ちなみにこれ、個人的に伺いたいんですが、ふんどし姿じゃないですか?

國村:あ、それ言い忘れましたけど、最初はもうすっぽんぽんだったんですよ。

MC:ふんどしという発案は國村さんが?

國村:いえいえ、韓国にも映倫に相当するような組織があるらしく、やっぱり、それはまずかろうということで。で、日本で言うたらなんや言うて、それはやっぱりふんどしかという。劇中オムツって言ってますけど、たぶんオムツと見まがうということもあったのかもしれませんね。

MC:はい、まだ大丈夫そうです。どんどん手が上がりますね。

Q:素晴らしい映画ありがとうございました。監督に質問なんですけれど、この映画は観る側の想像に委ねる部分がたくさんあると思うんですけれども、監督の中で國村さんが演じた役に関しては、監督なりに細かい設定とか考えてあるんでしょうか。あと國村さんに質問ですが、今回演じた役に関して、國村さんなりの人物の背景や解釈をある程度考えて役作りをされたんでしょうか。

監督:この映画を通して(國村が演じた)“よそ者”は、ずっと観客に質問を投げかける立場にあります。これは映画そのものが観客に質問を投げかけるという設定なんですけど、「この状況で“よそ者”をどう思いますか?」とか、またその状況が変わったときに、観客はどう思いますか?ということをずっと投げかけ続ける映画です。なのでこの“よそ者”というキャラクターはとても大事なんですけど、その理由としては、劇中の登場人物たちの“よそ者”に対する考えがどんどん、どんどん変わっていくんですね。そのよそ者に対するイメージがまとまらなかったのが、どんどんまとまっていくんですが、一人ひとりの解釈が全部違うんですね。だから、たったひとつの解釈で定義する映画ではないというのが、この映画の特徴です。なので自分自身もキャラクターをひと言で定義することはできないんですけど、観客の皆さんがどんな解釈をしようが、すべての解釈が合っていると自分は思っています。この映画は観客が自分で整理して完成させる、そういう映画であることを期待しております。
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國村:“その男”をやるに当たって、私が考えたことを申しますと、よく言われる役作りとか、そういうアプローチは機能しない。もっと言えばご覧になってお分かりのように、あれ実在するものではないかもしれない。つまり人でもなければ、何かのエネルギー体なのか、存在として本当にあるのか。あの男を見たという人の噂の中にあの男がいたり、あと、最後、イサムという牧師になろうとしている若者が、自分が見ている目の前の存在を、逆にお前はどう思うと聞かれたときに、「お前は悪魔だ」と、そうすると、スッとそこに悪魔として存在している、存在しているのかどうかわからないですけど。というイメージなんですね。ですから、あの存在自体が本当にあるのかどうかわからないものを、どうつくるというのは全く無理な話で、無理矢理ひとつ何か自分の実感を伴ったイメージにしようとしたときには、この話の中でのあのキャラクターの存在意義というか役割というか、それって何だろうって。そこからアプローチした方がこれはいいかなって。例えばですけど、コクソンという片田舎の小さなコミュニティを池に例えて、そこにポンと放り込まれた異物としての石ころ。その石ころがポンと池に投げ込まれることによって起きる波紋。みたいなことを、つまりはその無理矢理に何やって言うと、その池に投げ込まれる石かもしれない。そんなふうなアプローチをしました。

MC:ありがとうございます。ではお時間の関係で最後のおひとりです。

Q:最後までドキドキする映画で、でもその中にちょっと笑いの要素があって、そこが救いでよかったです。キャストの皆さん素晴らしくて、チョン・ウヒさんの現場での印象をそれぞれお聞かせください。

國村:じゃあ僕から。彼女もそれこそまだ若いですけど、やっぱり舞台からの素養をきっちりスキルとして積んでいて、しかも現場での居方も含め、女優さんとして本当にクオリティが高いなと。何より彼女はあのムミョンというキャラクターを自分がどういうふうに捉えているかを含め、それを言葉に置き換えてちゃんとしゃべることができるという、何て言うんですかね、若いけどすごくクオリティの高い女優さんである、というのが僕の印象です。

監督:チョン・ウヒさんの役はたくさんの女優さんがオーディションを受けました。その中で彼女を選んだ理由としては、チョン・ウヒさんが最適だと思ったからです。ものすごい力を持っていて、その力というのは外から見える力というよりは、その方自身が持っている気といいますか、そういう力を感じました。私はこの役に力を見せたかったのでチョン・ウヒさんを選びました。2時間半あるランニングタイムの中で、すべての人物の背景になるのがコクソンという地域なんですけど、その地域を通して“神”という存在を描写したいと思っていたんです。“神”を描写する手段としては、サウンドや背景、時間の変化や天気の変化を通して“神”を伝えたかったんです。イメージの変化を通して、映画のストーリーを徐々に観客たちにも理解してもらえるんじゃないかと思いました。その力をチョン・ウヒさんを通して皆さんに伝えたかったんです。前半は出演していなくてせりふもあまりありませんが、映画の緊張感を持続させる力がある役者が必要だと思ったから、チョン・ウヒさんを選びました。また、現場ではすごく可愛らしい、妹のような存在でいて、でも映画をご覧になった皆さんはご存知だと思いますが、期待以上にパワフルな演技をしてくださいました。

MC:ありがとうございます。最後にお2人に、公開は3月11日なんですが、今日、皆さん最速で観ていただいてひと言いただければと思います。國村さんからお願いします。

國村:本当にいらしていただいてありがとうございます。本当は最初に聞こうと思っていたんですけど、あの、どうでした?

(大きな拍手)

國村:よかったー。この『哭声/コクソン』を楽しんでいただいて本当によかったと思います。で、ここからお願いでございます。この『哭声/コクソン』という映画はある意味、今までこんな映画はなかったと思います。カテゴライズできない映画、映画の新たな楽しみ方がこの作品だと思っています。ぜひお友達にそういう体験をさせてみたいと思った方は、友達とまた一緒に観にきてくださいね。今日はありがとうございました。

MC:では、監督お願いします。

監督:この『哭声/コクソン』をつくり上げて、今言えるのは一抹の未練もないということです。ナ・ホンジンという監督のすべてを注ぎ込んだ、未練のない作品だと思っています。どんな評価を皆さんからいただいても、それを全部受け止めたいと思います。ナ・ホンジンという監督が6年をかけて、すべてを注ぎ込んでつくった映画なんで、周りの友達に、こういう監督が6年をかけてつくった映画だということを伝えてください。長い間、本当にありがとうございます。

MC:ありがとうございました。ということでナ・ホンジン監督、國村隼さん、もう一度大きな拍手でお送りください。

監督&國村:ありがとうございました。

2017年1月24日 シネマート新宿

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『哭声/コクソン』
2017年3月11日公開
監督:ナ・ホンジン 出演:クァク・ドウォン ファン・ジョンミン 國村隼 チョン・ウヒ