【全起こし】映画『変態だ』の音楽全集発売記念“変態だ祭”が開催! 安齋肇、みうらじゅん、前野健太が考える真の“変態”とは?

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(左から)「変態だ」ポーズをキメるみうらじゅん、前野健太、安齋肇監督

映画『変態だ』の音楽全集発売を記念して「変態だ祭」が開催されイベント開始前に、本作で映画監督デビューした安齋肇、企画・原作のみうらじゅん、映画初主演を飾った前野健太が報道陣の前に登場。本作への思い、それぞれが考える変態、撮影秘話などを語った。

Q:今回、中途半端なロッカーである主人公が…

前野:あ、中途半端なロッカー、、、

みうら:(前野に)現実の話じゃないから。ちょっとねヒドイなって思ったけど(笑)。傷ついたよね? でも映画の話ですからね。

Q:決してそうのようなつもりではなく(笑)、劇中で中途半端なロッカーである主人公が一人前の変態になれるかというのを追っていく面があるかと思いますが、みうらさんをはじめ皆さんは“一人前の変態”とは何かを教えていただけますでしょうか。

安齋:“空耳”じゃないんですけど、「変態!」って時々「天才!」って聞こえるんですよ。「テンサイ!」って言ってるのに「ヘンタイ!」に聞こえたりするんですよ。だから“天才”と“変態”は紙一重だと思ってるんです。天才というのは元々才能じゃないですか。変態も多分、才能だと思うんです。ただそれを見つけるっていうのをうまく描けたらなっていうふうに追っかけていったんですけど、ただ、この前野健太(が演じる)という主人公が天才なんで、生まれついての変態とも言えると思いますけど。(前野に)余計なこと言った?

安齋:大丈夫だよね? 傷ついてないよね。

前野:大丈夫です。

安齋:あの、本人のこと言ってるわけじゃないでからね。

みうら:僕が考える“一人前の変態”は、頑張って、バランスを欠くことですかね。安定しないということが変態なんですよね。変態=ロックだと僕、思ってたんですけど、あの映画の中でも、愛人と奥さんの間ではうまくやれる、人なんですけど、何かの事件でバランスを思いっきり欠くということが、良いことなのか悪いことなのかは観た人が決めることだと思うんですけども、一歩メタモルフォーゼするためには、バランスをできる限り崩すように努力することかなーって書きました。

Q:前野さんは演じられてみていかがでしたか?

前野:山奥で「変態だ!」って叫ぶんですけど、あの言葉はやっぱり、「頑張ろう」とか励ましの言葉よりも内側から言うことで魔法の言葉になるんですね。あれ、実は。

みうら:あれ、実は。いや、ほんま。

前野:あれ、ほんま。あれ、やっぱりだから、「俺は変態だ」って誰もいないところでやっぱり苦しくなったら叫べばいいと思うんです皆。そうすると軽くなるんですよね体が。だから皆こう、ちょっと、あぁきついなっていうときは、「変態だ!」って叫ぶとすごく救われるんです。そういう魔法の言葉、魔法の映画でございます。

Q:ではあのシーンで(主人公の)“男”は一人前になったんでしょうか。

前野:彼は、、そこじゃないんです。

Q:あ、そこじゃないんですね。

前野:それはね、2があるらしんです(笑)。

みうら:そうですね(笑)。

前野:実は2が、原作が。

みうら:何なら3まで考えています。

前野:だから一人前になったかどうかはまだ、わからないです。ただ、あの言葉は強いです。

みうら:とらやにフラッと帰ってきた感じの1作目でしたので、2作目からはまた、いろんなところを旅すると思いますので。

Q:安齋さんに伺いますが、みうらさんからこのオファーを受けたときにどのような印象がありましたでしょうか。なんだこりゃ?という感じなのか、スッと自分の中に入ってきたのか。作品の印象は。

安齋:実は、内容を知る前に、二つ返事でOKしちゃったんです。

みうら:内容は関係ないもんね?

安齋:内容ではないんですね、もう。そうなった場合は。その内容を見て、言ってみれば怖気づくとか、そんなことは全くなかったですね。今まで、みうらじゅんという人が書いてきた青春自伝的なものの中では、かなり特殊なものなので、しかもフィクションで、フィクションの世界に本気で踏み込んできた感じがしたんで。すごく、新しいことを始めるんだなってワクワクする高揚感の方がありました。

Q:撮影を進めていくうちに、“あ、失敗したなどうしよう”とか?

安齋:あ、もちろんです。それはもう、ずっと。ただ、よーく考えたら僕、すごい遅刻癖があって、すべての仕事をマイナスから入ってるんですね。

みうら:理路整然と(笑)。

安齋:なので後ろ向きなことは、一つも感じませんでした。むしろどうしたらうまく最終的にこの映画が結んでいくんだろうかっていことだけを追っかけていたんで。よく怒られるんですけど、楽しかったんですよ。本当に申し訳ないんですけど、毎回、毎回起こることがすごく新鮮で、楽しかったです。ずーっと撮影期間通じて、僕は前野君の健康のことだけを考えていました。風邪引かないといいなーっていう。まぁ祈ってるだけですけど。

みうら:それ一番大切ですもんね。監督はドクターですよね?

Q:今、衝撃の発言というか、パート2というお話がありましたが、もし本当に実現するとしたら、どういう。

みうら:いや、一番初め、3部作撮ってくれって言われたんだよ俺。それ今言いますけど、実はいちばん初めに話があったとき、3部作を撮ってくれっておっしゃったんで、鵜呑みにしてますんでそれを。待ってます、それは。

前野:僕も最初お話いただいたときに、3部作でって。はい。今初めて言いました。

みうら:最後は宇宙に行きますんで。

前野:はい。

安齋:僕はとても宇宙までついていける自信はないんですけど、できる限り頑張ってみようかなとは(笑)。

Q:モノクロで撮った理由は?

みうら:白黒の活版ページに合わせたんだよね?

安齋:はい(笑)。あの、すごく単純に、モノクロだったら安いんじゃないかっていう。

みうら:初め言ってましたよね?

安齋:そういう間違った考え方だったんです。すべてはカラーで撮ったんで、カラーをあえてモノクロにしたので、かえって手間がかかってるんですよ。非常に無駄なことをしました。ま、すごく単純にモノクロが好きなんです。

Q:みうらさんからそういうリクエストがあったとか。

みうら:いや、違います。安齋さんが勝手に。

安齋:勝手にモノクロに仕上げました。

みうら:初めから言ってましたから、白黒は。

安齋:白黒で大事なところだけカラーっていう。ある世代にとっては沁みる映画のつくりなんですよね。

みうら:昔のね、パートカラーね。昔のポルノはよくそういうのがあったんですけどね。

Q:前野さんにお聞きしたいんですけど、この映画がもしヒットしたら…

みうら:この映画がもしヒットしたらって(笑)質問がおかしくないですか。

Q:もし大ヒットしたら、街中とかでも「変態だ!」っていう声をかけられたりすると思いますが、役柄的に出演に当たって、この仕事を受けるかどうか迷われたり、いろいろ考えられたりあるかと思うんですけど、そいう葛藤はありましたか?

前野:葛藤は、ありました。なんか演劇みたいになっちゃった(笑)。

みうら:葛藤ないとバカみたいですよね。葛藤ぐらいある方がいいよね。葛藤ないってすごいよね。

前野:ありましたけど、なんかモジモジはしてましたけど、たぶんやるんだろうなって自分では分かっていて、心の奥底ではやるんだろうなって、もう、お誘いいただいたときからスタートはしていました。だから葛藤というのは当然しますけど、それはやるやらないじゃなくて、どうかっこよく見せていくかとか、原作がどういうものなのかとか、ちゃんと役に寄せていくというか。なんなんでしょうね。

Q:じゃあ断わるってことは全然ありえなかったということですか?

前野:ありえないですよ、新宿区民ですから。

みうら:近所だからね。

前野:練馬に住んでたままだったら、断わっても距離があるじゃないですか。

みうら:会わなくて済んだもんね。

前野:やっぱりお2人から電話が掛かってきたときに、家の近くにいるからっていうこととかあったんですよ。

みうら:あー行った行った。

前野:それもう断われないですよね。

みうら:もう包囲されてる状態だもんね。

安齋:まぁストーキングですね。

みうら:そういえば行ったね夏。

安齋:近所まで行くからって、近所の飲み屋教えろって(笑)。

みうら:そんなことあったね。忘れてた。

前野:だから、たぶん練馬だったら来られなかったと思うんです。山手通り、環七越えてまでは来ないと思うですよね。

安齋:でも、俺は横浜だから、逆に神奈川に近づいたら俺の包囲網がある。

前野:その距離感って実は、大事かなって僕は結構思っていて、今ネット社会じゃないですか。こんな中で距離感っていうのは大事に、何の話だっけこれ(笑)。

みうら:ネット社会だけど、近所まで来て交渉するっていうのはね、今なかなかないことですから。

安齋:今は顔を見ないで仕事とかしてますからね。

みうら:その辺は昔ながらのやり口で。昭和のやり口なんで。交渉は昭和でしたよね。

前野:段々葛藤というのは崩されていくんですよね。何の質問でしたっけ?

みうら:葛藤だよ(笑)。

Q:女優さんについて月船さららさんと、白石茉莉奈さんのキャスティング秘話と印象をお聞かせください。

安齋:月船さんは宝塚出身の方には珍しく、かなり挑戦的な、チャレンジングな映画に出ていらして、結構過激なこともされてるんですよ。あとから知ったんですけど、宝塚の中では浮いているぐらいサブカル好きだったらしいんですね。偶然なんですけど。僕は単純に容姿だけでまず月船さんはすごい魅力的だったのと、みうらプロデューサーと脚本の松久君が白石さんを選んでくれたんで、これがまたすごいフォトジェニックな方なんで、その2人と前野健太っていう、この才能のある男を組ませたらすごいとんでもないことが起こるだろうなっていう、初めて言葉として使いますけど、そんな化学反応を見てみたかったんです(笑)。

みうら:言いますよね、化学反応って言いますね。石垣島でコミューンつくってるみたいな感じでしょ。ね? 大麻やってるような。

Q:前野さんがこの映画は魔法になるかもしれないということをおっしゃっていましたが、どんな方に観てほしいですか?

前野:ふらっと観てほしいですね。死にたいなとか思ってる人には結構いいんじゃないですか。

みうら:そんな人、わざわざ新宿ピカデリーまで行くかな?

安齋:そうだよ。

前野:僕がアンサーソングで「変態か」という曲を書いたんですけど、映画には入ってないんですけど最初書いたサビの部分が、“自分を殺めたくなったら誰もいない山奥でそう叫べばいい、変態だ!”とか。映画大好きという人にももちろんオススメですけど、普段映画観ない人とかひっそり音楽とか聞いている人にも届く魔法の映画なんじゃないかなって僕は結構。僕がそういうタイプなんで、ひっそり暮らしてるんで。そういう人にも届くんじゃないかなって僕は思ってますけどね。あ、これR18か、18歳以上か。全部の世代ではないんですね。でもみうらさんも高校生ぐらいからピンク映画館に。

みうら:行ってましたね。

前野:だから、今、ピカデリーって厳しいんですか?

安齋:いやいやいや、そこの話は(笑)。

みうら:そうか、自動発券機で買えないんですよ。Rのやつは。だから窓口行かなきゃなんないんですけどね。

安齋&前野:低い声で買えば。

みうら:そうですよね。ひげとか描いて。ね。変態の恰好して行ったら観られると思う、きっと。

安齋:変態免除ね。

みうら:変態免除、1,000円になると思うな。

Q:初監督に当たって安齋さんが、これは絶対やりたいとこだわった点をお聞かせください。

安齋:撮影をしてもらった三浦憲治さんは65歳なんですよ。で、その人が「安齋、これは多分、現役最後の遺作になるからそのつもりでな」と言われたので、その人に遺作って言われちゃうと僕もそこに遺作を込めなきゃいけないじゃないですか。遺作になるかは分からないですけど、映画に対する考えていることはほとんど入れていると思います。映像のことも、モノクロにこだわったことも、音楽の使い方や、映像処理的な編集のことも、全然関係ないですけど、ポスターとかグッズとかそういう映画に関わるすべてのことをできたんじゃないかなと思ってるので、僕は遺作で十分なんですけど。3部作あるらしいですけど(笑)。

Q:みうらさんと前野さんは、グッときたシーンはどこですか。

みうら:俺はね、やっぱり表情ですよね。皆さんの表情が、安齋さんが待って待って出したのか、待たなくて出たのか分からないけども、出てる人たちの表情がやっぱすごく新鮮っていうか、当然原作は一人で書いているもんで映画とはまったく違うことなんで、映画でやっぱりすごいなと思うのは、役に成り切っている人たちの表情が素晴らしかったなと思ったんですけど。薫子(月船)もそうだったしマエケンもそうだし、皆、自分みたいに演じて自分じゃないみたいな、ドキュメンタリーのようでドキュメンタリーじゃないみたいな。あの感じの撮り方っていうのは、この映画の面白いところだなと思います。

前野:なんかいつもいいなって思うシーンって違うんですけど、今フッとその質問を受けて浮かんだのは、雪山で、雪山のシーンもカラーが?

安齋:ありますよ。1か所だけですけど。

前野:そこのシーンが今すごく、あぁいいシーンだったなーって。なんかこう、それをやるために皆がこれ以上やったら月船さん死んじゃうよとか、事故になるよとかギリギリのところで美術の人とか造形の人とかすごい工夫したりとか、そのことをすごく思い出してあのシーンなんかグッとくるんですよね。そのシーンは観ていただきたいですね。なんかいいシーンだなって。皆すごいそこのシーンに向ってああだこうだ緊迫感があったなっていう。

安齋:月船さんのケアを皆がすごい一生懸命して、付きっ切りでやってたんですけど、その横で、(前野が)ほぼ全裸でコート1枚しか着てなくて。

みうら:ほぼ全裸って、役だからね(笑)。趣味でやってるわけじゃないからね。

安齋:だから多分、撮影しているときにはこのシーンがどうとか思うことはなかったんじゃないですかね。皆、月船さんの面倒を見るけど俺はなっていうね。

前野:(撮影を)見てないんですよ、僕だから、あのシーン。ちょっとは行きましたけど、すごいワチャワチャしてたんです皆。ここはすごい大変って。それを思い出してあのシーン。

みうら:こんなタイトルの映画で、生き死にの話をしていることがおかしいもんね。そこがギャップがあって面白いんだよねこの映画は。ね。

2016年11月30日 Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

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『変態だ』
2016年12月10日公開
監督:安齋肇 企画・原作・脚本:みうらじゅん 出演:前野健太 月船さらら 白石茉莉奈
舞台挨拶付き専用チケットも発売中。

「変態だ」音楽全集は発売中!